新太と別れてから、1ヶ月ほど経ったある日の夜のこと。
静まり返った自室のベッドに腰を下ろしていたとき、手の中のスマホがブッと短く震えた。
ふと視線を落とすと、ロック画面に表示された名前に、心臓が嫌な音を立てて跳ねる。
『新太』
震える指でその通知をタップすると、画面が切り替わり、見慣れたトークルームが開いた。
最後に私が送ったメッセージのすぐ下に、ぽつんと新しい吹き出しが現れている。
そこには、信じられない言葉が並んでいた。
((久しぶり。柚那にはちゃんと伝えておこうと思って……俺、好きな人ができたんだ))
……。
私は、液晶画面を見つめたまま固まった。
息の仕方を忘れたように、胸の奥がぎゅっと苦しくなる。
『好きな人ができた』?
わざわざ別れた彼女である私に、こんな報告をしてくる理由。
少し考えれば、すぐにわかった。
新太と梨花は、自分たちのイメージダウンを恐れているのだ。
私と二股をかけていたことが周囲にバレないように、あらかじめ二人で口裏を合わせ、「別れてから1ヶ月後に好きな人ができて、それから付き合った」という綺麗な筋書きにしようとしている。
私にわざわざ「好きな人ができた」という段階を踏んで報告してきたのも、自分たちが悪者にならないための、卑怯な予防線だ。
そんな見え透いた嘘に、付き合ってあげる義理なんてない。
怒りと悲しみがぐちゃぐちゃに混ざり合い、指先が震えた。
((違うでしょ。))
((「好きな人ができた」じゃなくて、もう付き合ってるんでしょ? 梨花と))
私は、精一杯の強がりと、抑えきれない怒りを込めて送信ボタンを押した。
「既読」の文字はすぐについた。
けれど、そこからしばらく、画面は動かなかった。
きっと今頃、隣にいる梨花に画面を見せて「どうしよう」と相談でもしているんだろう。そう想像するだけで、吐き気がした。
数分後、再びスマホが鳴った。
((ごめん。梨花と付き合うことになった))
……やっぱり。
予想通りすぎる返信に、乾いた笑いが出そうになる。
((そうだよね。わかったよ))
それ以上、何も言えなかった。何も書けなかった。
もっと怒りをぶつけてやればよかったのかもしれない。最低だね、と罵ってやればよかったのかもしれない。
けれど、新太に散々嘘をつかれ、仲が良いと思っていた千春にも裏切られ、ここまで深く傷つけられたというのに……。
正直に言えば、まだ私の心の中には、新太に対する気持ちが黒い染みのようにこびりついて離れないのだ。
裏切られても、嘘をつかれても、まだあの優しかった頃の彼を求めてしまう自分がいる。
(……私って、本当にバカだ)
暗い部屋の中で光る液晶画面を伏せ、ベッドに倒れ込む。
今のこの、どうしようもなく複雑で、重たくて、ドロドロとした気持ちは、一体どこへ持っていけばいいんだろう。
私には、もう何もわからなくなってしまった。
静まり返った自室のベッドに腰を下ろしていたとき、手の中のスマホがブッと短く震えた。
ふと視線を落とすと、ロック画面に表示された名前に、心臓が嫌な音を立てて跳ねる。
『新太』
震える指でその通知をタップすると、画面が切り替わり、見慣れたトークルームが開いた。
最後に私が送ったメッセージのすぐ下に、ぽつんと新しい吹き出しが現れている。
そこには、信じられない言葉が並んでいた。
((久しぶり。柚那にはちゃんと伝えておこうと思って……俺、好きな人ができたんだ))
……。
私は、液晶画面を見つめたまま固まった。
息の仕方を忘れたように、胸の奥がぎゅっと苦しくなる。
『好きな人ができた』?
わざわざ別れた彼女である私に、こんな報告をしてくる理由。
少し考えれば、すぐにわかった。
新太と梨花は、自分たちのイメージダウンを恐れているのだ。
私と二股をかけていたことが周囲にバレないように、あらかじめ二人で口裏を合わせ、「別れてから1ヶ月後に好きな人ができて、それから付き合った」という綺麗な筋書きにしようとしている。
私にわざわざ「好きな人ができた」という段階を踏んで報告してきたのも、自分たちが悪者にならないための、卑怯な予防線だ。
そんな見え透いた嘘に、付き合ってあげる義理なんてない。
怒りと悲しみがぐちゃぐちゃに混ざり合い、指先が震えた。
((違うでしょ。))
((「好きな人ができた」じゃなくて、もう付き合ってるんでしょ? 梨花と))
私は、精一杯の強がりと、抑えきれない怒りを込めて送信ボタンを押した。
「既読」の文字はすぐについた。
けれど、そこからしばらく、画面は動かなかった。
きっと今頃、隣にいる梨花に画面を見せて「どうしよう」と相談でもしているんだろう。そう想像するだけで、吐き気がした。
数分後、再びスマホが鳴った。
((ごめん。梨花と付き合うことになった))
……やっぱり。
予想通りすぎる返信に、乾いた笑いが出そうになる。
((そうだよね。わかったよ))
それ以上、何も言えなかった。何も書けなかった。
もっと怒りをぶつけてやればよかったのかもしれない。最低だね、と罵ってやればよかったのかもしれない。
けれど、新太に散々嘘をつかれ、仲が良いと思っていた千春にも裏切られ、ここまで深く傷つけられたというのに……。
正直に言えば、まだ私の心の中には、新太に対する気持ちが黒い染みのようにこびりついて離れないのだ。
裏切られても、嘘をつかれても、まだあの優しかった頃の彼を求めてしまう自分がいる。
(……私って、本当にバカだ)
暗い部屋の中で光る液晶画面を伏せ、ベッドに倒れ込む。
今のこの、どうしようもなく複雑で、重たくて、ドロドロとした気持ちは、一体どこへ持っていけばいいんだろう。
私には、もう何もわからなくなってしまった。
