明里の口から語られたのは、新太たちのダンスパフォーマンスチームの打ち上げが終わった直後のことだった。
それは、私に対する新太の態度が急に素っ気なくなり、理由もわからず、ただ不安な日々を過ごしていたあの時期。
私が新太の態度に戸惑い、一人で泣きそうになりながら思い悩んでいたあの裏側で、勇斗は動いてくれていたのだという。
「勇斗ね、柚那が元気ないの、ずっと気にしてたんだよ。だから……」
カフェの賑やかなBGMが遠く聞こえる中、私はただ静かに明里の言葉に耳を傾けることしかできなかった。
手元のグラスに入った氷が、カランと小さな音を立てて溶けていく。
あの頃、私の異変にいち早く気づいていた勇斗は、学校から帰宅したあと、わざわざ新太を近所の公園に呼び出してくれていたらしい。
最初は他愛のない世間話なんかを話していたそうだ。夜の公園のベンチで、並んで缶ジュースを飲みながら。
けれど、勇斗は意を決して、ずっと聞きたかった核心に踏み込んだ。
『最近、柚那とどうなの?』
その瞬間、新太の纏う空気がピリッと変わったという。
一瞬だけ不機嫌そうに眉をひそめ、持っていた缶ジュースを強く握りしめる。
そして、どこか歯切れの悪い、苛立ちを隠すような声で返答があったそうだ。
『……普通だよ』
普通。
たったそれだけの言葉なのに、その響きはあまりにも冷たく、突き放すようだったらしい。
勇斗は明らかな違和感を覚えた。
新太は嘘をつくのが下手だ。
何かを隠しているのか、あるいは絶対に触れられたくない話題だったのか。
勇斗は新太の態度に不穏なものを感じながらも、これ以上踏み込むべきか迷い、わざとおどけたような冗談まじりのトーンでこう付け加えたという。
『普通か……。まあ、柚那を傷つけるようなことはしないでくれよ』
ただ純粋に私のことを心配して出た言葉。
けれど、そのたった一言が、新太の逆鱗に触れた。
『なんで勇斗にそんなこと言われなきゃいけねーの!? 勇斗には関係ないだろ!』
新太は突然立ち上がり、激しい苛立ちをあらわにして声を荒らげたという。
普段の温厚な新太からは想像もつかないほどの、感情の爆発だった。
勇斗は『しまった!』と瞬時に悟ったらしいが、もう遅かった。
新太は私のことを聞かれることに対して異常なほどの過敏さを見せ、そのまま背を向けて足早に帰ってしまったという。
「……って、勇斗が言ってた。新太、あんなに怒るなんて絶対におかしいって」
明里から聞かされたその話に、私はただ、言葉を失うことしかできなかった。
どうして新太は、あんなにも激しく苛立ったのだろうか。
梨花との関係を勇斗に勘付かれたと焦ったから?
それとも……あの時期、新太と梨花はすでに完全に自分たちの世界に入りきっていたから?
私とどうやって別れようか。
新太がそう考えていていたタイミングで、勇斗から『柚那を傷つけるな』と釘を刺された。
やましい気持ちがあるところに正論をぶつけられ、苛立ってしまったのだろう。
(あの時の新太の視界にはもう、私の姿なんて映っていなかったんだ……)
残酷な事実を突きつけられたようで、胸の奥が締め付けられるように痛む。
私があんなに悩んで苦しんでいた裏で、彼の意識は完全に私から外れていたのだ。
それでも、私の見えないところで真っ直ぐな優しさを向けてくれていた勇斗の存在だけが、冷え切った心にほんの少しだけ温かい光を落としていた。
それは、私に対する新太の態度が急に素っ気なくなり、理由もわからず、ただ不安な日々を過ごしていたあの時期。
私が新太の態度に戸惑い、一人で泣きそうになりながら思い悩んでいたあの裏側で、勇斗は動いてくれていたのだという。
「勇斗ね、柚那が元気ないの、ずっと気にしてたんだよ。だから……」
カフェの賑やかなBGMが遠く聞こえる中、私はただ静かに明里の言葉に耳を傾けることしかできなかった。
手元のグラスに入った氷が、カランと小さな音を立てて溶けていく。
あの頃、私の異変にいち早く気づいていた勇斗は、学校から帰宅したあと、わざわざ新太を近所の公園に呼び出してくれていたらしい。
最初は他愛のない世間話なんかを話していたそうだ。夜の公園のベンチで、並んで缶ジュースを飲みながら。
けれど、勇斗は意を決して、ずっと聞きたかった核心に踏み込んだ。
『最近、柚那とどうなの?』
その瞬間、新太の纏う空気がピリッと変わったという。
一瞬だけ不機嫌そうに眉をひそめ、持っていた缶ジュースを強く握りしめる。
そして、どこか歯切れの悪い、苛立ちを隠すような声で返答があったそうだ。
『……普通だよ』
普通。
たったそれだけの言葉なのに、その響きはあまりにも冷たく、突き放すようだったらしい。
勇斗は明らかな違和感を覚えた。
新太は嘘をつくのが下手だ。
何かを隠しているのか、あるいは絶対に触れられたくない話題だったのか。
勇斗は新太の態度に不穏なものを感じながらも、これ以上踏み込むべきか迷い、わざとおどけたような冗談まじりのトーンでこう付け加えたという。
『普通か……。まあ、柚那を傷つけるようなことはしないでくれよ』
ただ純粋に私のことを心配して出た言葉。
けれど、そのたった一言が、新太の逆鱗に触れた。
『なんで勇斗にそんなこと言われなきゃいけねーの!? 勇斗には関係ないだろ!』
新太は突然立ち上がり、激しい苛立ちをあらわにして声を荒らげたという。
普段の温厚な新太からは想像もつかないほどの、感情の爆発だった。
勇斗は『しまった!』と瞬時に悟ったらしいが、もう遅かった。
新太は私のことを聞かれることに対して異常なほどの過敏さを見せ、そのまま背を向けて足早に帰ってしまったという。
「……って、勇斗が言ってた。新太、あんなに怒るなんて絶対におかしいって」
明里から聞かされたその話に、私はただ、言葉を失うことしかできなかった。
どうして新太は、あんなにも激しく苛立ったのだろうか。
梨花との関係を勇斗に勘付かれたと焦ったから?
それとも……あの時期、新太と梨花はすでに完全に自分たちの世界に入りきっていたから?
私とどうやって別れようか。
新太がそう考えていていたタイミングで、勇斗から『柚那を傷つけるな』と釘を刺された。
やましい気持ちがあるところに正論をぶつけられ、苛立ってしまったのだろう。
(あの時の新太の視界にはもう、私の姿なんて映っていなかったんだ……)
残酷な事実を突きつけられたようで、胸の奥が締め付けられるように痛む。
私があんなに悩んで苦しんでいた裏で、彼の意識は完全に私から外れていたのだ。
それでも、私の見えないところで真っ直ぐな優しさを向けてくれていた勇斗の存在だけが、冷え切った心にほんの少しだけ温かい光を落としていた。
