翌日。
私はどうにか重い体を引きずって、学校へ向かった。
朝、教室まで明里が来てくれて、昨夜のことや今の胸の内を少しだけ話すことができた。
明里の痛ましそうな顔を見たらまた泣きそうになったけれど、なんとか歯を食いしばって堪える。
休み時間。
新太に振られたショックと悲しみに耐え切れず、教室の机に突っ伏していると、誰かに肩をトントンと優しく叩かれた。
顔を上げると、そこには勇斗が立っていた。
「よっ!」
ダメだ。
勇斗のまっすぐな顔を見た瞬間、我慢していたタガが外れ、堰を切ったように涙が溢れ出して止まらなくなってしまった。
私は慌てて両手で顔を覆う。
「ごめん……っ、勇斗の顔を見たら、なんか涙が止まらなくなっちゃう……」
勇斗は少し驚いたように目を見開くと、何事もなかったかのように私の前の席にスッと座った。
私の泣き顔が他のクラスメイトから見えないよう、わざと大きな背中で視線を遮ってくれる。
面と向かって目線を合わせ、静かな声で言った。
「……俺が泣かせたみたいじゃんか(笑)」
冗談めかして笑った後、勇斗は続けて、うんと優しいトーンで言葉を紡いだ。
「大丈夫、大丈夫。泣きたいときは泣けばいいんだよ。涙が出るときは、そのまま流せばいい」
そう言って、勇斗は目の前にコトッと何かを置いた。
「ほら、箱ティッシュ持ってきたぞ!」
差し出されたそれを見て、私は涙でぐしゃぐしゃの顔のまま、思わず噴き出した。
「ふふっ……そんなに使わないよ」
気がつくと、さっきまであんなに泣いていたのに、私は少しだけ笑っていた。
涙が落ち着いた頃、勇斗は少し真面目な顔をして、優しく言った。
「なんか聞いてほしいこととかあったら、明里でも俺でもいいから、ちゃんと話せよ? 溜め込むのは一番良くないからな!」
そう言い残して、授業の始まりを告げるチャイムとともに、勇斗は自分の教室へと戻っていった。
彼のさりげない優しさとあたたかさが、今は本当にありがたかった。
放課後。
私は一つ深呼吸をして、紙袋を手に持った。
中に入っているのは、クリーニングに出した新太の学ラン。
部活が始まる前に、これを返しに行かなければならない。
重い足取りで新太の教室へ向かい、そっと中を覗き込んだ。
けれど、そこに新太の姿はなかった。
代わりに視界に飛び込んできたのは、梨花の姿だった。
友達と楽しそうに笑い合っている彼女を見た瞬間、心臓がギリッと嫌な音を立てて痛む。
私は新太の席に近づくと、机の横にあるフックに、紙袋の持ち手を引っ掛けた。
……これで、本当に終わり。
振り返ることなく、私は静かに教室を後にした。
その後の部活は、地獄だった。
ハンドボール部とサッカー部のコートは隣同士だ。
グラウンドに出ると、視界の端にどうしても新太の姿が入ってしまう。
さっき、机の横に掛けられたあの紙袋を見たのだろうか。
そんな私の不安をよそに、新太はいつも通りボールを追いかけ、仲間と楽しそうに笑い合っている。
学ランを返されても、私たちの関係が終わっても、彼の心には何の波風も立っていないのかな……。
そう思うと、胸が押し潰されそうで、息ができないくらい辛かった。
部活が終わったあと、私は真美、明里、千春の三人としばらく話をすることになった。
私は意を決して、みんなに打ち明けた。
「……新太と、別れたんだ」
驚くみんなの前で、私は消え入るような声で続けた。
「……まだ、諦められていないんだよね」
すると、千春がまっすぐな瞳で言った。
「また自分を磨いて、振り向かせればいいんだよ」
彼女の言葉は正論だ。納得できる部分も確かにある。
前を向いて、もっと可愛くなって、見返してやるくらいじゃないといけない。
けれど、今の私にはそんな気力なんて、もうどこにも残っていなかった。
(……気力なんて、ないよ)
でも、諦めきれないからこそ、こうして苦しいんじゃないか。
心の中でそう呟きながら、私はただ、行き場のない思いを抱えて俯くことしかできなかった。
私はどうにか重い体を引きずって、学校へ向かった。
朝、教室まで明里が来てくれて、昨夜のことや今の胸の内を少しだけ話すことができた。
明里の痛ましそうな顔を見たらまた泣きそうになったけれど、なんとか歯を食いしばって堪える。
休み時間。
新太に振られたショックと悲しみに耐え切れず、教室の机に突っ伏していると、誰かに肩をトントンと優しく叩かれた。
顔を上げると、そこには勇斗が立っていた。
「よっ!」
ダメだ。
勇斗のまっすぐな顔を見た瞬間、我慢していたタガが外れ、堰を切ったように涙が溢れ出して止まらなくなってしまった。
私は慌てて両手で顔を覆う。
「ごめん……っ、勇斗の顔を見たら、なんか涙が止まらなくなっちゃう……」
勇斗は少し驚いたように目を見開くと、何事もなかったかのように私の前の席にスッと座った。
私の泣き顔が他のクラスメイトから見えないよう、わざと大きな背中で視線を遮ってくれる。
面と向かって目線を合わせ、静かな声で言った。
「……俺が泣かせたみたいじゃんか(笑)」
冗談めかして笑った後、勇斗は続けて、うんと優しいトーンで言葉を紡いだ。
「大丈夫、大丈夫。泣きたいときは泣けばいいんだよ。涙が出るときは、そのまま流せばいい」
そう言って、勇斗は目の前にコトッと何かを置いた。
「ほら、箱ティッシュ持ってきたぞ!」
差し出されたそれを見て、私は涙でぐしゃぐしゃの顔のまま、思わず噴き出した。
「ふふっ……そんなに使わないよ」
気がつくと、さっきまであんなに泣いていたのに、私は少しだけ笑っていた。
涙が落ち着いた頃、勇斗は少し真面目な顔をして、優しく言った。
「なんか聞いてほしいこととかあったら、明里でも俺でもいいから、ちゃんと話せよ? 溜め込むのは一番良くないからな!」
そう言い残して、授業の始まりを告げるチャイムとともに、勇斗は自分の教室へと戻っていった。
彼のさりげない優しさとあたたかさが、今は本当にありがたかった。
放課後。
私は一つ深呼吸をして、紙袋を手に持った。
中に入っているのは、クリーニングに出した新太の学ラン。
部活が始まる前に、これを返しに行かなければならない。
重い足取りで新太の教室へ向かい、そっと中を覗き込んだ。
けれど、そこに新太の姿はなかった。
代わりに視界に飛び込んできたのは、梨花の姿だった。
友達と楽しそうに笑い合っている彼女を見た瞬間、心臓がギリッと嫌な音を立てて痛む。
私は新太の席に近づくと、机の横にあるフックに、紙袋の持ち手を引っ掛けた。
……これで、本当に終わり。
振り返ることなく、私は静かに教室を後にした。
その後の部活は、地獄だった。
ハンドボール部とサッカー部のコートは隣同士だ。
グラウンドに出ると、視界の端にどうしても新太の姿が入ってしまう。
さっき、机の横に掛けられたあの紙袋を見たのだろうか。
そんな私の不安をよそに、新太はいつも通りボールを追いかけ、仲間と楽しそうに笑い合っている。
学ランを返されても、私たちの関係が終わっても、彼の心には何の波風も立っていないのかな……。
そう思うと、胸が押し潰されそうで、息ができないくらい辛かった。
部活が終わったあと、私は真美、明里、千春の三人としばらく話をすることになった。
私は意を決して、みんなに打ち明けた。
「……新太と、別れたんだ」
驚くみんなの前で、私は消え入るような声で続けた。
「……まだ、諦められていないんだよね」
すると、千春がまっすぐな瞳で言った。
「また自分を磨いて、振り向かせればいいんだよ」
彼女の言葉は正論だ。納得できる部分も確かにある。
前を向いて、もっと可愛くなって、見返してやるくらいじゃないといけない。
けれど、今の私にはそんな気力なんて、もうどこにも残っていなかった。
(……気力なんて、ないよ)
でも、諦めきれないからこそ、こうして苦しいんじゃないか。
心の中でそう呟きながら、私はただ、行き場のない思いを抱えて俯くことしかできなかった。
