いつもの自分の部屋で一人、震える指でそのキーの操作を確かめた。
……そうだ。お母さんがメールを打っていたあの操作だ。キーを押した回数によって割り当てられた文字が決まる。いわゆる「ガラケー打ち」と呼ばれる打ち方。
スマホの画面をタップし、表示されている梨花の投稿を、私はもう一度じっと見つめ直した。
【4*0004*00033322555444*444411222】
私はごくりと息を呑み、手元の古い携帯電話のキー配置に、その数字と記号を一つずつ、パズルのピースを合わせるように慎重に当てはめていった。
4* → だ
000 → ん
4* → だ
000 → ん
少しずつ、意味を持たなかった羅列が、言葉の形になり始める。
333 → す
22 → き
55 → に
5 → な
胸の奥が、ざわつき始める。
444* → っ
4444 → て
11 → い
222 → く
カチッ、カチッ、カチッ。
静かな部屋の中に、ボタンを押す小さなプラスチックの音が規則正しく響く。
手元のキーに印字された「あかさたな」の文字を追いかけながら、頭の中で文字が次々と変換されていく。そして、すべての点と点が一本の線に繋がった瞬間、心臓が痛いほど大きく、ドクンと跳ねた。
変換して浮かび上がった言葉に、体中の血がすっと引いていくような感覚がした。
((だんだんすきになっていく))
画面の向こうに隠されていたのは、あまりにもまっすぐな言葉だった。
だんだん、すきになっていく……?
その言葉の意味を脳が理解した瞬間、私の頭の中に、真っ先に浮かんだのは新太の顔だった。
嫌な汗がじわりと掌に滲む。
まさか、新太に対してじゃないよね?
そんなはずはない。梨花には、他に好きな人がいるのかもしれない。同じブロックの他の男の子とか、あるいは別のクラスの誰か。ただの私のひどい勘違いで、流行りの歌の歌詞かなにかかもしれないじゃないか。
そうやって必死に自分に言い聞かせ、頭の中に渦巻く最悪な想像を打ち消そうとする。
けれど、あの茉莉のコメントがどうしても頭から離れない。
((仕方がないよ))
なぜ、茉莉はそう言ったの?
――彼女がいる人を好きになってしまったのだから、仕方がないよ。
もし、そういう意味だとしたら。
部屋の時計が刻む秒針の音が、急に大きく聞こえ始める。
解読してしまった言葉の意味を噛み締めるたびに、私の胸の奥には、冷たくて重い塊が居座り続けていた。
正体のわからない漠然とした大きな不安に、私はゆっくりと、確実に押しつぶされそうになっていた。
……そうだ。お母さんがメールを打っていたあの操作だ。キーを押した回数によって割り当てられた文字が決まる。いわゆる「ガラケー打ち」と呼ばれる打ち方。
スマホの画面をタップし、表示されている梨花の投稿を、私はもう一度じっと見つめ直した。
【4*0004*00033322555444*444411222】
私はごくりと息を呑み、手元の古い携帯電話のキー配置に、その数字と記号を一つずつ、パズルのピースを合わせるように慎重に当てはめていった。
4* → だ
000 → ん
4* → だ
000 → ん
少しずつ、意味を持たなかった羅列が、言葉の形になり始める。
333 → す
22 → き
55 → に
5 → な
胸の奥が、ざわつき始める。
444* → っ
4444 → て
11 → い
222 → く
カチッ、カチッ、カチッ。
静かな部屋の中に、ボタンを押す小さなプラスチックの音が規則正しく響く。
手元のキーに印字された「あかさたな」の文字を追いかけながら、頭の中で文字が次々と変換されていく。そして、すべての点と点が一本の線に繋がった瞬間、心臓が痛いほど大きく、ドクンと跳ねた。
変換して浮かび上がった言葉に、体中の血がすっと引いていくような感覚がした。
((だんだんすきになっていく))
画面の向こうに隠されていたのは、あまりにもまっすぐな言葉だった。
だんだん、すきになっていく……?
その言葉の意味を脳が理解した瞬間、私の頭の中に、真っ先に浮かんだのは新太の顔だった。
嫌な汗がじわりと掌に滲む。
まさか、新太に対してじゃないよね?
そんなはずはない。梨花には、他に好きな人がいるのかもしれない。同じブロックの他の男の子とか、あるいは別のクラスの誰か。ただの私のひどい勘違いで、流行りの歌の歌詞かなにかかもしれないじゃないか。
そうやって必死に自分に言い聞かせ、頭の中に渦巻く最悪な想像を打ち消そうとする。
けれど、あの茉莉のコメントがどうしても頭から離れない。
((仕方がないよ))
なぜ、茉莉はそう言ったの?
――彼女がいる人を好きになってしまったのだから、仕方がないよ。
もし、そういう意味だとしたら。
部屋の時計が刻む秒針の音が、急に大きく聞こえ始める。
解読してしまった言葉の意味を噛み締めるたびに、私の胸の奥には、冷たくて重い塊が居座り続けていた。
正体のわからない漠然とした大きな不安に、私はゆっくりと、確実に押しつぶされそうになっていた。
