君の隣。~一番愛した人の裏切り、泥沼のモラハラ彼氏。傷だらけの私を最後に救ったのは、10年間私を忘れられずにいた「親友の元彼」でした~

ダンス練習と部活を終えたある日の夜、私はなんとなくSNSを開いていた。
真美や明里、千春、それに梨花や茉莉の投稿を眺めていた。

梨花と茉莉とは、体育祭の準備が始まる少し前に友達申請がきて繋がっていた。
そこまで親しいわけではなかったけれど、お互いの近況が見える距離にはいたのだ。

その中で、昨日の梨花の投稿に目が留まった。

そこには、
【4*0004*00033322555444*444411222】

と、意味の分からない数字と記号だけが並んでいた。

最初は文字化けかなとも思ったけれど、すぐに違うことがわかった。
茉莉がその投稿にコメントをしていたからだ。

茉莉のコメントは一言。
『仕方がないよ』

どういうことだろう。
胸の中がざわついて、不思議な感覚に陥る。
これは梨花と茉莉、二人の間だけで通じるなにか――そう確信した。

その日は結局、その数字が頭から離れず、胸騒ぎがしてなかなか寝付くことができなかった。

ーーーーーーーーーー

次の日。
部活を終えて、明里と少しだけ話をしていたときのことだった。

「そういえばさ、明里はこれどういうことだと思う? なんかずっと気になっちゃって」

私はスマホの画面を出し、昨日投稿されていたその数字を明里に見せた。

「あぁー、これ梨花の投稿だよね? 私も見たけど、なんだろうね……。数字でなにか暗号みたいな文章を作ってるのかな」

明里も首を傾げるだけで、それ以上のことは何もわからなかった。


明里と別れて家に帰り、リビングに入ると、お母さんが机に向かってなにやら作業をしていた。
「何してるの?」と覗き込むと、お母さんは見慣れない古いガラケーを操作していた。昔飼っていた犬の写真をガラケーから現像できると聞いて、わざわざ充電して起動させていたらしい。

懐かしい写真を見返して盛り上がった流れから、メールの話になった。
「昔はメールを送るとき、こうやって文字を打ってたんだよ」と、お母さんは楽しそうに実際の操作を見せてくれたのだ。

ボタンを何度もカチカチと連打して文字を変えたり、記号のボタンを押して濁点をつけたりする、その独特な打ち方。
「へえ、大変だったんだね」なんて返しながら、私は自分の部屋に戻った。

ベッドに寝転び、どうしても気になっていたスマホの画面を開く。
昨日からずっと頭を離れない、梨花の投稿。

【4*0004*00033322555444*444411222】

その数字と記号の羅列を眺めていた、その時だった。

さっきお母さんが見せてくれた、ガラケーのボタンの動きが、脳内で鮮烈にフラッシュバックした。

『4』の後に、濁点を表す『*』。
その後に続く、同じ数字の繰り返し。

「……もしかして」

心臓がドクンと大きく跳ねた。
もしこれが、あのガラケーのボタンを押す回数を表しているんだとしたら。

私は勢いよくベッドから起き上がると、お母さんのもとへ走った。
「お母さん、さっきのガラケー、ちょっとだけ貸して!」

驚くお母さんにそう言ってガラケーを受け取ると、私は急いで自分の部屋に戻った。

スマホの画面に表示された梨花の投稿と、手元にある古いガラケーを並べる。
画面は真っ暗だけれど、並んだボタンには数字と一緒に「あ・か・さ・た・な」とひらがなが印字されている。

耳元で、心臓の音がうるさいほど鳴り響いていた。

私はゆっくりと深呼吸をして、ガラケーのボタンの上に指を置いた。