夏が近づいてきた頃、学校では文化祭と体育祭の準備が本格的に始まった。
私たちの学校の体育祭は、全学年が縦割りのブロック(色別)に分かれて総合優勝を競い合う。
当日に向けて模擬店のメニューを考えたり、巨大な応援幕を作るアート担当が放課後に残って作業をしたりと、学校全体が独特の熱気に包まれていく。
そんな中、私は体育祭の「花」とも言われているパフォーマンスチームに入った。
グラウンド全体を使って、大迫力のダンスを全校生徒の前で披露する、毎年大人気の花形種目だ。
さらに、同じブロックの3年生の先輩から熱心に声をかけてもらい、応援団も兼任することになった。
せっかくの高校生活。お祭り騒ぎは全力で楽しみたい。
大変そうだけど、やりがいは十分にありそうだった。
クラスの枠を超えたこの行事。新太や勇斗、明里も、それぞれが所属するブロックのダンスチームに入ったみたいだ。
つまり、ここからは仲良しのみんなであっても、それぞれの色を背負ったライバルということになる。
「絶対に負けないからね!」なんて明里と言い合いながらも、お互いの健闘を称え合う時間が楽しかった。
もちろん、新太とも「お互い頑張ろうね」と笑い合ったばかりだ。
けれど、配られたプリントに書かれた練習予定は、想像以上に過酷なものだった。
夏休みを丸々使って、毎日炎天下のグラウンドで練習を重ねる過密なスケジュール。
まだ梅雨明け前だというのに、じりじりと照りつける太陽を想像するだけで、少し気が遠くなりそうだった。
そんな、夏休みに入るほんの少し前のこと。
放課後、部活へ向かおうと廊下を歩いていると、不意に声をかけられた。
「あ、柚那ちゃーん!」
振り返ると、新太と同じクラスの女の子二人が立っていた。
野球部のマネージャーをしている梨花(りか)と茉莉(まり)だ。
顔と名前は知っているし、すれ違えば「やっほー」と軽く手を振り合う程度の間柄。
だから、こうして向こうからわざわざ歩み寄ってきて、ちゃんと話しかけてくるのは初めてのことだった。
梨花が、人懐っこい笑顔を浮かべて話しかけてきた。
「柚那ちゃんもパフォーマンスチームなんだね! うちらも入ったんだよ〜!」
「あ、そうなんだね! 練習大変そうだよね」
「うん! ……あ、そうそう。新太くんも私たちと同じチームだからさ」
梨花はそこでふわりと笑って、私に少しだけ顔を近づけた。
「みんな柚那ちゃんのライバルだ! お互い頑張ろうね、負けないよ〜!」
明るい声。けれど、最後の一言のとき、梨花の瞳が少しだけ笑っていないように見えたのは、気のせいだろうか。
「……うん、お互い頑張ろうね!」
そう返すと、梨花たちは「バイバーイ!」と無邪気に手を振りながら去っていった。
私と同じ学年であれば、私と新太が付き合っていることはみんな知っている。
同じクラスで仲が良いから、自然と新太の名前が出ただけかもしれない。
だけど、わざわざ私に新太の話を振ってきたことに、ほんの一瞬、チクリとした小さな違和感を覚えた。
それ以上深く考えることはせずに、私は自分の部活へ向かって歩き出した。
そしてとうとう夏休みが始まり、過酷で、そして長い本格的な練習の毎日が幕を開けた。
私たちの学校の体育祭は、全学年が縦割りのブロック(色別)に分かれて総合優勝を競い合う。
当日に向けて模擬店のメニューを考えたり、巨大な応援幕を作るアート担当が放課後に残って作業をしたりと、学校全体が独特の熱気に包まれていく。
そんな中、私は体育祭の「花」とも言われているパフォーマンスチームに入った。
グラウンド全体を使って、大迫力のダンスを全校生徒の前で披露する、毎年大人気の花形種目だ。
さらに、同じブロックの3年生の先輩から熱心に声をかけてもらい、応援団も兼任することになった。
せっかくの高校生活。お祭り騒ぎは全力で楽しみたい。
大変そうだけど、やりがいは十分にありそうだった。
クラスの枠を超えたこの行事。新太や勇斗、明里も、それぞれが所属するブロックのダンスチームに入ったみたいだ。
つまり、ここからは仲良しのみんなであっても、それぞれの色を背負ったライバルということになる。
「絶対に負けないからね!」なんて明里と言い合いながらも、お互いの健闘を称え合う時間が楽しかった。
もちろん、新太とも「お互い頑張ろうね」と笑い合ったばかりだ。
けれど、配られたプリントに書かれた練習予定は、想像以上に過酷なものだった。
夏休みを丸々使って、毎日炎天下のグラウンドで練習を重ねる過密なスケジュール。
まだ梅雨明け前だというのに、じりじりと照りつける太陽を想像するだけで、少し気が遠くなりそうだった。
そんな、夏休みに入るほんの少し前のこと。
放課後、部活へ向かおうと廊下を歩いていると、不意に声をかけられた。
「あ、柚那ちゃーん!」
振り返ると、新太と同じクラスの女の子二人が立っていた。
野球部のマネージャーをしている梨花(りか)と茉莉(まり)だ。
顔と名前は知っているし、すれ違えば「やっほー」と軽く手を振り合う程度の間柄。
だから、こうして向こうからわざわざ歩み寄ってきて、ちゃんと話しかけてくるのは初めてのことだった。
梨花が、人懐っこい笑顔を浮かべて話しかけてきた。
「柚那ちゃんもパフォーマンスチームなんだね! うちらも入ったんだよ〜!」
「あ、そうなんだね! 練習大変そうだよね」
「うん! ……あ、そうそう。新太くんも私たちと同じチームだからさ」
梨花はそこでふわりと笑って、私に少しだけ顔を近づけた。
「みんな柚那ちゃんのライバルだ! お互い頑張ろうね、負けないよ〜!」
明るい声。けれど、最後の一言のとき、梨花の瞳が少しだけ笑っていないように見えたのは、気のせいだろうか。
「……うん、お互い頑張ろうね!」
そう返すと、梨花たちは「バイバーイ!」と無邪気に手を振りながら去っていった。
私と同じ学年であれば、私と新太が付き合っていることはみんな知っている。
同じクラスで仲が良いから、自然と新太の名前が出ただけかもしれない。
だけど、わざわざ私に新太の話を振ってきたことに、ほんの一瞬、チクリとした小さな違和感を覚えた。
それ以上深く考えることはせずに、私は自分の部活へ向かって歩き出した。
そしてとうとう夏休みが始まり、過酷で、そして長い本格的な練習の毎日が幕を開けた。
