あの出来事から、ちょうど1ヶ月が経った。
表面上は、以前と変わらない穏やかな日々が過ぎている。
新太は私に優しく接してくれるし、私たちの関係は一見、何事もなかったかのように元通りだった。
けれど、私の心の中にある疑念の炎は、そう簡単には消えてくれなかった。
一度芽生えてしまった疑心暗鬼は、厄介なことに私の心を少しずつ蝕んでいく。
LINEのやり取りをしていても、少しでも言葉のニュアンスが噛み合わなかったり、いつもより返信のテンポが遅かったりするだけで、心臓がドクンと嫌な音を立てるのだ。
(これ、私じゃない誰かに送るはずだったLINEを、間違えて私に送ってるんじゃ……?)
そんな疑いが胸をよぎるたび、私は激しい自己嫌悪に陥り、自分で自分を責めた。
新太はちゃんと目の前で連絡先を消してくれたのに、どうして私は彼を信じきれないんだろう。
信じたいのに信じられない。
そんな矛盾した想いが、いつも頭のどこかにこびりついて離れなかった。
『俺には柚那だけだよ』
『だいすきだよ』
彼が何度も言ってくれたその言葉を、私はお守りのように頭の中で何度も何度も反芻して、自分自身に言い聞かせていた。
ーーーー
1年生の終わりが近づいた頃、私たちは大きな進路選択を迫られた。
文系に進むか、理系に進むか。
当然のように私と新太は、迷いなく文系を選択した。
新太と同じクラスになれたらいいな、なんて淡い期待も抱いていた。
けれど、勇斗は違った。
ある日、勇斗とLINEのやり取りしていたときのこと。
進路の話題になり、勇斗から『俺は理系にするよ』と送られてきた。
将来、医療系の専門職に就きたいという明確な夢を中学の頃から抱いていた彼は、迷わず理系へと進むことを選んだようだった。
自分の将来をしっかりと見据えて、真っ直ぐに進んでいく勇斗の姿に、私はどこか尊敬に近い関心を抱いた。
『そっか、高校生の間はもう一緒のクラスになることはないんだね』
文系と理系に別れてしまえば、同じクラスになる確率はゼロになる。
私はスマホの画面に、少しの寂しさを込めてそう打ち込んだ。
すぐに勇斗から『だな。でも、またいつでも連絡してよ』と、優しさが滲む返信が届いて、胸の奥が少しだけ温かくなったのを覚えている。
そして、迎えた2年生のクラス発表の日。
校舎の壁に張り出された名簿の前は、新学期独特の高揚感と生徒たちの歓声で溢れていた。
人だかりの隙間から、必死に自分の名前と、みんなの名前を探す。
私は6組。新太は2組。
真美や明里、千春はみんな揃って3組。
そして、勇斗は8組。
「5組の鈴村くん、次8組らしいよ」
「あーあ、一緒のクラスがよかったなぁ……」
すぐ近くにいた別のクラスの女子たちが、ひそひそと残念そうに話しているのが聞こえてきた。
(……そっか。勇斗と一緒のクラスになりたいって思う子、いるんだよね)
その言葉だけが妙に耳に残って、なんだか少しだけ胸がざわついた。
理系に進んだ勇斗の教室は、文系の私たちとは違い、階層さえも離れてしまう。
今までは廊下に出ればすぐに顔を見られたのに、なんだか急に遠くに行ってしまったような気がした。
大好きな人たちとみんなクラスが離れてしまって、少し寂しい気持ちが胸に広がっていく。
新しい教室へと向かう足取りは、ほんの少しだけ重かった。
表面上は、以前と変わらない穏やかな日々が過ぎている。
新太は私に優しく接してくれるし、私たちの関係は一見、何事もなかったかのように元通りだった。
けれど、私の心の中にある疑念の炎は、そう簡単には消えてくれなかった。
一度芽生えてしまった疑心暗鬼は、厄介なことに私の心を少しずつ蝕んでいく。
LINEのやり取りをしていても、少しでも言葉のニュアンスが噛み合わなかったり、いつもより返信のテンポが遅かったりするだけで、心臓がドクンと嫌な音を立てるのだ。
(これ、私じゃない誰かに送るはずだったLINEを、間違えて私に送ってるんじゃ……?)
そんな疑いが胸をよぎるたび、私は激しい自己嫌悪に陥り、自分で自分を責めた。
新太はちゃんと目の前で連絡先を消してくれたのに、どうして私は彼を信じきれないんだろう。
信じたいのに信じられない。
そんな矛盾した想いが、いつも頭のどこかにこびりついて離れなかった。
『俺には柚那だけだよ』
『だいすきだよ』
彼が何度も言ってくれたその言葉を、私はお守りのように頭の中で何度も何度も反芻して、自分自身に言い聞かせていた。
ーーーー
1年生の終わりが近づいた頃、私たちは大きな進路選択を迫られた。
文系に進むか、理系に進むか。
当然のように私と新太は、迷いなく文系を選択した。
新太と同じクラスになれたらいいな、なんて淡い期待も抱いていた。
けれど、勇斗は違った。
ある日、勇斗とLINEのやり取りしていたときのこと。
進路の話題になり、勇斗から『俺は理系にするよ』と送られてきた。
将来、医療系の専門職に就きたいという明確な夢を中学の頃から抱いていた彼は、迷わず理系へと進むことを選んだようだった。
自分の将来をしっかりと見据えて、真っ直ぐに進んでいく勇斗の姿に、私はどこか尊敬に近い関心を抱いた。
『そっか、高校生の間はもう一緒のクラスになることはないんだね』
文系と理系に別れてしまえば、同じクラスになる確率はゼロになる。
私はスマホの画面に、少しの寂しさを込めてそう打ち込んだ。
すぐに勇斗から『だな。でも、またいつでも連絡してよ』と、優しさが滲む返信が届いて、胸の奥が少しだけ温かくなったのを覚えている。
そして、迎えた2年生のクラス発表の日。
校舎の壁に張り出された名簿の前は、新学期独特の高揚感と生徒たちの歓声で溢れていた。
人だかりの隙間から、必死に自分の名前と、みんなの名前を探す。
私は6組。新太は2組。
真美や明里、千春はみんな揃って3組。
そして、勇斗は8組。
「5組の鈴村くん、次8組らしいよ」
「あーあ、一緒のクラスがよかったなぁ……」
すぐ近くにいた別のクラスの女子たちが、ひそひそと残念そうに話しているのが聞こえてきた。
(……そっか。勇斗と一緒のクラスになりたいって思う子、いるんだよね)
その言葉だけが妙に耳に残って、なんだか少しだけ胸がざわついた。
理系に進んだ勇斗の教室は、文系の私たちとは違い、階層さえも離れてしまう。
今までは廊下に出ればすぐに顔を見られたのに、なんだか急に遠くに行ってしまったような気がした。
大好きな人たちとみんなクラスが離れてしまって、少し寂しい気持ちが胸に広がっていく。
新しい教室へと向かう足取りは、ほんの少しだけ重かった。
