章 出逢い
雅人と別れたあとの私の心は、決してすぐに吹っ切れたわけじゃなかった。
ふとした瞬間に楽しかった思い出がよみがえって、夜に一人で泣くこともあった。
それでも、時間が経つにつれて、雅人を思い出す回数は少しずつ減っていった。
ーーーーーーーーーー
そんなある日の休み時間、教室の窓枠にもたれて、同じクラスの友達・エマと話していた。
「ねえねえ、柚那。隣のクラスの新太(あらた)って知ってる?」
身を乗り出してくるエマに、私は首を横に振る。
「ううん、全然。その子がどうしたの?」
「今ね、連絡取り合ってて、なんかいい感じなんだよね〜!」
ちょうどその時、エマが廊下のほうを見てパッと顔を輝かせた。
「あ! 新太ーー!!」
通りかかった男子生徒が、こちらを振り返る。
目が合った瞬間、私は、ふと立ち止まった。
(……え?)
ほんの一瞬だけ、彼が驚いたように目を見開いたのだ。
けれど次の瞬間には、人懐っこい笑顔を浮かべて近づいてくる。
「エマ、何? ……って、そっちの子は?」
「紹介するね! 私の友達の――」
「下崎柚那です」
私が名乗ると、彼はもう一度だけ、動きを止めた。
「下崎……? えっ、下崎!? 俺と同じ苗字じゃん!」
大げさに笑ってみせる彼の笑顔は、あまりにも自然で。
さっきの驚いた顔は、私の見間違いだったのかな、と思うほどだった。
ーーーーーーーーーー
その後、エマを介して新太と連絡先を交換した。
でもエマはすぐにバイト先の人に夢中になって、「新太? 最近あんまり話してないや」とあっけらかんと言った。
二人の間に、実はそこまでの進展はなかったらしい。新太も、エマとは友達の距離感だと言っていたから、私は深く気に留めなかった。
それからは、エマ以外の友達とも仲良くなって、私は私の学校生活を歩み始めた。
あとは、部活をどうするか。
中学からハンドボールが好きだったけれど、この高校には女子の部活がない。
少しの寂しさを覚えつつ、私は男子ハンドボール部のマネージャーになることにした。
入部初日、同じくマネージャーとして手続きに来ていたのが、美波(みなみ)だった。
「あ、もしかしてマネージャー志望? 一緒だね!」
明るく話しかけてくれた美波とは、すぐに意気投合した。
いつしか放課後は、私と新太、そして美波の三人で過ごすのが当たり前になっていた。
新太は、誰に対しても同じように、人懐っこく笑う人だった。美波にも、通りすがりの先輩にも。
(そういえば、初めて会った日のあの驚いた顔は、何だったんだろう)
ふとそう思ったけれど、すぐに美波の笑い声にかき消された。
雅人と別れたあとの私の心は、決してすぐに吹っ切れたわけじゃなかった。
ふとした瞬間に楽しかった思い出がよみがえって、夜に一人で泣くこともあった。
それでも、時間が経つにつれて、雅人を思い出す回数は少しずつ減っていった。
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そんなある日の休み時間、教室の窓枠にもたれて、同じクラスの友達・エマと話していた。
「ねえねえ、柚那。隣のクラスの新太(あらた)って知ってる?」
身を乗り出してくるエマに、私は首を横に振る。
「ううん、全然。その子がどうしたの?」
「今ね、連絡取り合ってて、なんかいい感じなんだよね〜!」
ちょうどその時、エマが廊下のほうを見てパッと顔を輝かせた。
「あ! 新太ーー!!」
通りかかった男子生徒が、こちらを振り返る。
目が合った瞬間、私は、ふと立ち止まった。
(……え?)
ほんの一瞬だけ、彼が驚いたように目を見開いたのだ。
けれど次の瞬間には、人懐っこい笑顔を浮かべて近づいてくる。
「エマ、何? ……って、そっちの子は?」
「紹介するね! 私の友達の――」
「下崎柚那です」
私が名乗ると、彼はもう一度だけ、動きを止めた。
「下崎……? えっ、下崎!? 俺と同じ苗字じゃん!」
大げさに笑ってみせる彼の笑顔は、あまりにも自然で。
さっきの驚いた顔は、私の見間違いだったのかな、と思うほどだった。
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その後、エマを介して新太と連絡先を交換した。
でもエマはすぐにバイト先の人に夢中になって、「新太? 最近あんまり話してないや」とあっけらかんと言った。
二人の間に、実はそこまでの進展はなかったらしい。新太も、エマとは友達の距離感だと言っていたから、私は深く気に留めなかった。
それからは、エマ以外の友達とも仲良くなって、私は私の学校生活を歩み始めた。
あとは、部活をどうするか。
中学からハンドボールが好きだったけれど、この高校には女子の部活がない。
少しの寂しさを覚えつつ、私は男子ハンドボール部のマネージャーになることにした。
入部初日、同じくマネージャーとして手続きに来ていたのが、美波(みなみ)だった。
「あ、もしかしてマネージャー志望? 一緒だね!」
明るく話しかけてくれた美波とは、すぐに意気投合した。
いつしか放課後は、私と新太、そして美波の三人で過ごすのが当たり前になっていた。
新太は、誰に対しても同じように、人懐っこく笑う人だった。美波にも、通りすがりの先輩にも。
(そういえば、初めて会った日のあの驚いた顔は、何だったんだろう)
ふとそう思ったけれど、すぐに美波の笑い声にかき消された。
