君の隣。~一番愛した人の裏切り、泥沼のモラハラ彼氏。傷だらけの私を最後に救ったのは、10年間私を忘れられずにいた「親友の元彼」でした~

新太が退院して、久しぶりに学校に登校してきた日のこと。

休み時間に、新太が私のクラスの教室までやってきて、私を外へと呼び出した。
廊下で向かい合うと、新太は少し真面目な、どこか緊張した面持ちで口を開いた。

「柚那、2人で話がしたい。……ちゃんと謝りたいから、部活のあと、少しだけ時間作ってほしい」

少し痩せたような新太の真っ直ぐな眼差しに、私は小さく頷いた。

「……うん、分かった」

部活が終わった放課後。
私たちは近くの公園へ移動して、話をすることにした。

夕暮れの公園のベンチの前で、新太は私に向き合って、少し硬い表情のまま口を開いた。

「話聞いてくれてありがとう。……まずは、ちゃんと謝りたくて」

新太は一呼吸置いて、私をじっと見つめた。

「柚那は毎日、部活で疲れてるのに病院に来てくれたし、俺の身の回りのことまでやってくれてたのに……。それなのにあんな、傷つけるようなこと言って本当にごめん。慣れない入院生活でストレスが溜まってて、それを一番ぶつけちゃいけない柚那に当たって、傷つけた」

新太の口から語られる心からの言葉を聞きながら、胸の中にあった冷たい塊が、少しずつ溶けていくのが分かった。

「……入院で体もしんどかっただろうし、ストレスが溜まるのも分かる。でも、やっぱりさすがに傷ついたよ」

私はそっと視線を落とし、自分の気持ちも素直に言葉にした。

「だけど、正直に言うと、私も学校と部活と毎日のお見舞いで、たぶん疲れが溜まってて心の余裕がなかったんだと思う。きつく言い返しちゃって、私の方こそごめんね。……もう、体は大丈夫なの?」

私の言葉に、新太はホッとしたように目元を緩めた。

「ありがとな。ちょっと体力は落ちた気がするけど、もう体は大丈夫だよ。……あ、それと、母さんがさ。『柚那ちゃんが入院中ずっと来てくれてたから本当に助かった、ありがとうって伝えてね』って言ってたよ」

お母さんからの温かい言葉に、胸の奥がじんわりと温かくなる。
毎日通ってよかったな、と素直に思えた。

「あとさ……」

新太は少し気まずそうに頭をかきながら、続けた。

「柚那からLINEの返信が完全になくなった時、どうしていいか分からなくて、実は勇斗に話したんだよ。そしたら、勇斗にめちゃくちゃ怒られた」

「え、勇斗に……?」

驚いて聞き返す私に、新太は苦笑いをした。

「うん。『お前、毎日大変なのに来てくれてた柚那に向かって何言ってんだ、最低だな』ってさ。あいつに『ちゃんと頭冷やせ』って怒られて、本当にその通りだなって気付かされたんだ」

美波と別れてから4人で集まることはなくなっていたけれど、勇斗は裏で、私たちのために新太に厳しい言葉を投げてくれていたらしい。

勇斗が新太にそんな話をしてくれたなんて、私は全然知らなかった。

勇斗の男らしい気遣いのおかげもあって、私たちはその日、無事に仲直りをすることができた。