一睡もできないまま迎えた、翌朝。
カーテンの隙間から差し込む朝の光すら、今の私には酷く冷たく感じられた。
ベッドの上で膝を抱え、ただじっと、手の中にあるスマホを見つめ続ける。
その張り詰めた空気の中、私のスマホが短く震えて、新太からの連絡を知らせた。
飛びつくように画面を開く。
『大丈夫だった!!』
『ウイルスの方だった! 1週間程度で退院だって』
「……よかったぁ……っ」
画面の文字を見た瞬間、張り詰めていた緊張の糸が一気に切れた。
我慢していた涙がボロボロと溢れ出して、視界が滲む。
それと同時に、体の力が一気に抜けていくのが分かった。
後遺症の心配は高くないんだ。
最悪の事態にはならなかったんだ。
本当に、本当に本当によかった……。
新太が入院している病院は、幸いにも私の家から自転車で行ける距離にあった。
少しでも新太の力になりたくて、少しでも長く彼の顔を見ていたくて。
安心した私は、その日から毎日、面会時間が許す限りの時間を新太の病室で過ごすことにした。
久しぶりに会った新太は、私が思っていたよりもずっと顔色が良くて、割と元気そうだった。
「柚那、わざわざ来てくれたんだ」
そう言って少し照れくさそうに笑う彼の姿を、実際に自分の目で見て確認できたことで、ようやく心の底から安心することができた。
それからの毎日は、新太を中心にして回り始めた。
学校がある日は、放課後に部活を大急ぎで終わらせて、それからすぐに自転車を走らせて病院へと向かう。
少しでも早く新太に会いたくて、ペダルを漕ぐ足に自然と力が入った。
面会時間が終わるギリギリまで新太のそばにいて、たわいない話をしたり、彼の退屈しのぎに付き合ったりする。
そして、帰りの遅い時間になってようやく帰宅する――。
毎日が、その繰り返しの生活になった。
最初の3日間程度は、気が張っていたこともあって全然平気だった。
新太のためなら、どんなに忙しくても、自転車をどれだけ漕いでも疲れることなんてないと思っていた。
だけど、4日目ぐらいから、私自身にもどうしても日々の疲れが出始めてしまう。
朝、起きるのが少しずつ辛くなっていく。
授業中も、ふとした瞬間に強い眠気が襲ってくるようになった。
さらに新太の方も、自由の利かない慣れない入院生活によるストレスや退屈さのせいで、だんだんと心の余裕がなくなっていたのかもしれない。
せっかく病院へ行って顔を合わせているのに、会話がどこかギクシャクしてしまう。
会って話していても、ちょっとした言葉のすれ違いや、本当に些細なことで言い合いになってしまうことが増えていった。
お互いに、疲れているのは分かっているはずなのに。
正式な退院を翌日に控えた、その日の夜のこと。
私たちは、LINEの中でまた些細なことから言い合いになってしまった。
画面越しだからこそ、お互いの感情がダイレクトにぶつかり合う。
文字だけでのやり取りは上手くニュアンスが伝わらず、お互いに言葉がどんどん尖っていく。
(なんでそんな言い方するの……?)
胸を痛めながら画面を見つめていた、その時だった。
新太から送られてきた画面の文字を見て、私はドクンと息が止まった。
『どうせ俺がいない間、他の男と浮気してるんだろ?』
……信じられなかった。
心臓が冷たくなって、言葉が出ない。
そして、どうしても、どうしても許せなかった。
あんなに心配して、一睡もできない夜を過ごして。
自分のことなんて後回しにして、部活帰りの疲れた体で、毎日毎日、面会時間が終わるまで必死に病院に通って……。
それなのに、新太は私のことをそんな風に思っていたの?
私のどこに、浮気を疑われるような要素があるんだろう。
悔しさと悲しさで、涙が次から次へと溢れて止まらなくなった。
スマホを持つ手が、怒りとショックでカタカタと震える。
新太のために必死だった私の気持ちが、全部ぐちゃぐちゃに踏みにじられたような気がした。
その瞬間から、私は新太へのLINEを一切返さなくなった。
画面を閉じて、スマホをベッドに放り投げる。
迎えた退院の日も、私からは何も連絡をしなかった。
おめでとうの言葉すら、送る気になれなかった。
新太からは、焦ったようなLINEが何通か届いて通知が鳴っていたけれど。
私はそれを開いても、返信を打つ気には到底なれず、ただ静かに画面を伏せた。
カーテンの隙間から差し込む朝の光すら、今の私には酷く冷たく感じられた。
ベッドの上で膝を抱え、ただじっと、手の中にあるスマホを見つめ続ける。
その張り詰めた空気の中、私のスマホが短く震えて、新太からの連絡を知らせた。
飛びつくように画面を開く。
『大丈夫だった!!』
『ウイルスの方だった! 1週間程度で退院だって』
「……よかったぁ……っ」
画面の文字を見た瞬間、張り詰めていた緊張の糸が一気に切れた。
我慢していた涙がボロボロと溢れ出して、視界が滲む。
それと同時に、体の力が一気に抜けていくのが分かった。
後遺症の心配は高くないんだ。
最悪の事態にはならなかったんだ。
本当に、本当に本当によかった……。
新太が入院している病院は、幸いにも私の家から自転車で行ける距離にあった。
少しでも新太の力になりたくて、少しでも長く彼の顔を見ていたくて。
安心した私は、その日から毎日、面会時間が許す限りの時間を新太の病室で過ごすことにした。
久しぶりに会った新太は、私が思っていたよりもずっと顔色が良くて、割と元気そうだった。
「柚那、わざわざ来てくれたんだ」
そう言って少し照れくさそうに笑う彼の姿を、実際に自分の目で見て確認できたことで、ようやく心の底から安心することができた。
それからの毎日は、新太を中心にして回り始めた。
学校がある日は、放課後に部活を大急ぎで終わらせて、それからすぐに自転車を走らせて病院へと向かう。
少しでも早く新太に会いたくて、ペダルを漕ぐ足に自然と力が入った。
面会時間が終わるギリギリまで新太のそばにいて、たわいない話をしたり、彼の退屈しのぎに付き合ったりする。
そして、帰りの遅い時間になってようやく帰宅する――。
毎日が、その繰り返しの生活になった。
最初の3日間程度は、気が張っていたこともあって全然平気だった。
新太のためなら、どんなに忙しくても、自転車をどれだけ漕いでも疲れることなんてないと思っていた。
だけど、4日目ぐらいから、私自身にもどうしても日々の疲れが出始めてしまう。
朝、起きるのが少しずつ辛くなっていく。
授業中も、ふとした瞬間に強い眠気が襲ってくるようになった。
さらに新太の方も、自由の利かない慣れない入院生活によるストレスや退屈さのせいで、だんだんと心の余裕がなくなっていたのかもしれない。
せっかく病院へ行って顔を合わせているのに、会話がどこかギクシャクしてしまう。
会って話していても、ちょっとした言葉のすれ違いや、本当に些細なことで言い合いになってしまうことが増えていった。
お互いに、疲れているのは分かっているはずなのに。
正式な退院を翌日に控えた、その日の夜のこと。
私たちは、LINEの中でまた些細なことから言い合いになってしまった。
画面越しだからこそ、お互いの感情がダイレクトにぶつかり合う。
文字だけでのやり取りは上手くニュアンスが伝わらず、お互いに言葉がどんどん尖っていく。
(なんでそんな言い方するの……?)
胸を痛めながら画面を見つめていた、その時だった。
新太から送られてきた画面の文字を見て、私はドクンと息が止まった。
『どうせ俺がいない間、他の男と浮気してるんだろ?』
……信じられなかった。
心臓が冷たくなって、言葉が出ない。
そして、どうしても、どうしても許せなかった。
あんなに心配して、一睡もできない夜を過ごして。
自分のことなんて後回しにして、部活帰りの疲れた体で、毎日毎日、面会時間が終わるまで必死に病院に通って……。
それなのに、新太は私のことをそんな風に思っていたの?
私のどこに、浮気を疑われるような要素があるんだろう。
悔しさと悲しさで、涙が次から次へと溢れて止まらなくなった。
スマホを持つ手が、怒りとショックでカタカタと震える。
新太のために必死だった私の気持ちが、全部ぐちゃぐちゃに踏みにじられたような気がした。
その瞬間から、私は新太へのLINEを一切返さなくなった。
画面を閉じて、スマホをベッドに放り投げる。
迎えた退院の日も、私からは何も連絡をしなかった。
おめでとうの言葉すら、送る気になれなかった。
新太からは、焦ったようなLINEが何通か届いて通知が鳴っていたけれど。
私はそれを開いても、返信を打つ気には到底なれず、ただ静かに画面を伏せた。
