君の隣。~一番愛した人の裏切り、泥沼のモラハラ彼氏。傷だらけの私を最後に救ったのは、10年間私を忘れられずにいた「親友の元彼」でした~

美波と勇斗の恋は、結論から言うと、やはりそう長くは続かなかった。

2人は恋人同士になったものの、どこかぎこちなく、いつまでも友達関係の延長線を抜け出せずにいるようだった。

私と新太もたまに喧嘩をすることはあって、その度に2人に話を聞いてもらったりしていたけれど、美波と勇斗の間にはそれ以上に衝突が多かった。

「勇斗が全然恋人っぽく接してくれないの。手すらまともに繋いでくれないし、やっぱり私のこと好きになってくれてないのかな……」

美波からはそんな不満をこぼされ、一方で勇斗からも悩みを聞かされたりと、交互に相談されて私が間に挟まれることもあった。

お互いの心の距離も、それ以上深く交わることのないまま——
最終的には勇斗が振るという形で、2人の関係は終わりを迎えてしまった。

そして、美波と勇斗が別れたことをきっかけに、あれほど毎日のように集まっていた私たち4人が、一緒に過ごすことはなくなっていった。

グループでの集まりがなくなってからも、私は新太とのことで何か悩むと、勇斗によく連絡をして相談するようになっていた。
そこにやましい気持ちなんて一切なくて、ただただ、不器用な新太の気持ちを一番よく知っている勇斗に、純粋に話を聞いてもらいたかっただけだった。

ーー美波と勇斗が別れてから、しばらく経ったある日のこと。

学校の帰り道、美波からふいに声をかけられた。

「ねぇ柚那、もうすぐ新太の誕生日じゃん? 私、新太に誕プレ買いたいから、一緒に選んでくれる? 新太に何がいいか聞いても、なんでもいいって言うんだよねー」

その言葉を聞いた瞬間、私は自分の耳を疑った。

みんなで誕生日パーティーを開くような予定なんて、どこにもない。
それなのに、美波が新太に個別にプレゼントを渡そうとしていること。
そして、それを彼女である私に「一緒に選んで」と頼んでくること。

(……なんか…、変だよね…?)

ぐるぐると、頭の中がパニックになる。
こんな風にモヤモヤしてしまうのは、私だけなのだろうか。私の感覚がおかしいのかな。私の心が狭すぎるだけなのかな。

何が正しくて何が間違っているのか、自分でもよく分からなくなってしまった。

だけど、どうしても嫌だった。
たとえ大好きな美波であっても、他の女の子が私の彼氏である新太に、個別に誕生日プレゼントを選んで渡そうとしている事実が、理屈抜きでただただ嫌だった。

結局、美波の屈託のない笑顔に押し切られる形で、私は断ることができずに一緒に買い物へ来てしまった。

ポップな音楽が流れる、明るい雑貨屋の店内。
美波は本当に、悪気なんて微塵もない様子で、楽しそうにショップを回っている。

「あ、あれ良さそうだね!」
「ねぇ柚那、こういうのって新太好きそうかな?」

美波が手に取ったのは、新太がいつも着ている服に似合いそうな、落ち着いた色のキーケースだった。

(……うん、新太そういうの好きだよ)

喉の奥まで出かかった言葉を飲み込む。
隣で無邪気に笑う美波に対して、私は胸が苦しくて、引き攣った笑顔でただ頷くのがやっとだった。

どうして私はここにいるんだろう。
何のために大好きな彼氏のプレゼントを、他の女の子と一緒に選んでいるんだろう。

だんだんと自分が惨めに思えてきて、明るい照明がやけに眩しく感じた。
買い物の最中、私はずっと涙を堪えるのに必死だった。

「新太、喜んでくれるといいなー! 柚那、今日は付き合ってくれて本当にありがとう!」

美波は満足そうな笑顔で、そう言って帰っていった。

ぽつんと1人取り残された帰り道。
夕暮れの街並みが、視界の端からゆっくりと暗がりに沈んでいく。

その景色を見つめているうちに、張り詰めていた糸がプツリと切れて、堪えていた涙が一気に溢れて止まらなくなった。

私は、滲む視界でスマホの画面を操作した。

新太の誕生日を、どうして美波が一番に祝おうとしているのか。二人がいつの間に、そんな距離感になっていたのか。
聞きたいことは山ほどあるのに、自分だって新太の相談とはいえ、勇斗と連絡を取り合っている。だから、何も聞くことはできなかった。

ぽろぽろと零れる涙で画面が滲んで、何度も文字を打ち間違える。
私は逃げるように、泣きながら勇斗にLINEを送っていた。