君の隣。~一番愛した人の裏切り、泥沼のモラハラ彼氏。傷だらけの私を最後に救ったのは、10年間私を忘れられずにいた「親友の元彼」でした~

学校の正門を抜けると、すでにそこには新入生たちの熱気が渦巻いていた。
私は真っ直ぐにクラス発表の掲示板へと向かう。

「えっと……」

大勢の人が集まっているのをかき分けて、緊張で少し早くなる鼓動を感じながら自分の名前を探した。

(……あった。1年6組)

自分の名前を見つけてホッと息をついたのも束の間、急いで真美の名前も探す。
けれど、何度目で追っても私の名前の近くに真美の名前はない。どうやら彼女は1年3組だった。
同じクラスになれるかもと、うっすら期待していたけれど、そんな甘い期待は見事に外れてしまった。

「そっかぁ、残念。でも、お互い頑張ろうね!」

少しだけ寂しそうな顔で笑う真美と別れ、私は一人で6組の教室へ向かった。先ほどまでの軽やかな足取りは消え、心細さがじわじわと胸に広がっていく。

ガラリと教室の扉を開ける。
その瞬間、私の目に飛び込んできたのは、すでにいくつかのグループを作って楽しそうに笑い合う女子たちの姿だった。あちこちから「どこの中学?」「LINE交換しよ!」という明るい声が飛び交っている。

(うわ……完全に出遅れちゃったな)

圧倒的なアウェー感に打ちのめされそうになりながら、私は指定された自分の席にポツンと座り、逃げるようにカバンからスマホを取り出した。

少しでもこの寂しさを紛らわせたくて、雅人にLINEを打つ。

『真美とはクラス離れちゃった。仲良くなれそうな子、今のところいないなー……』

送信ボタンを押した、まさにその瞬間だった。

「おはよう! 私、遥(はるか)! どこの中学?」

後ろの席から、パッと花が咲いたような明るい声で話しかけられた。
驚いて振り返ると、そこにはひまわりのような眩しい笑顔の女の子が立っている。

「私は高松中学だよ! よろしくね!」
「あ、はじめまして! 柚那だよ。私は港東中学出身。よろしくね」

ドキドキして強張っていた私に、彼女が真っ直ぐに話しかけてくれたおかげで、張り詰めていた緊張の糸がふっと緩んだ。

遥と少し話をして打ち解けてきた頃、担任の先生が教室に入ってきた。

「体育館に移動するから、後に続けー」

先生の指示に従って、遥と並んで教室を出る。
廊下に出ると、隣のクラスからもぞろぞろと生徒が出てきていて、体育館へと続く長い列ができていた。

周囲を見渡しながら歩いていると、ふと、前方を歩く一人の男子生徒に視線が引き寄せられた。

(わ、背が高っ……! それに、すごく顔が小さい。野球部かな?)

すっきりとした坊主頭の、頭一つ分ほど背の高い男の子。
彼に思わず目を奪われたのは、きっと、付き合っている雅人とは正反対の印象だったからだと思う。雅人も同じ野球部だけど、私よりも少し背が低くて、どこか親しみやすい愛嬌のあるタイプだから。

そんな小さな新鮮さを胸の片隅に抱きながら、私たちは体育館へと移動した。

校長先生の長い話や担任紹介という、いかにも入学式らしい行事を終え、私たちは再び教室へと戻ってくる。
ここからは、緊張の自己紹介タイムだ。

順番が近づくにつれて、心臓の鼓動がドクドクと速くなる。ついに、私の番が来た。

「下崎柚那です。港東中学出身です。中学ではハンドボール部でした。よろしくお願いします!」

声が震えないように気をつけながら、なんとか言い切って席に着く。
全員の自己紹介が終わり、先生からの連絡事項が終わると、初日の登校はあっさりと終了した。

教室を出て遥と別れたあと、真美と合流して一緒に下校する。
行きと同じように自転車を並べて、お互いのクラスの様子を報告し合いながら家に帰った。

帰宅後、お母さんに学校の話をしたりして夕食を済ませる。
自分の部屋に戻り、ベッドにゴロンと寝転んでスマホを確認すると、雅人からLINEが届いていた。

『おつかれー。仲良くなれる友達ができたらいいね。俺のところは男子ばっかだよ(笑)』

画面の文字を見て、ふふっと自然に笑みがこぼれる。

そう、雅人が進学したのは工業高校。
学校全体のほとんどが男子生徒で、女子は数えるほどしかいない。

中学の卒業式の日、いつもの帰り道で、お互いに少し照れながら約束したことを思い出す。

「高校に行って目移りするなよー?」
「雅人こそ、浮気しないでね?」

そんな他愛のない冗談を言って笑い合いながら帰ったけれど、雅人の学校にはそもそも女子がほとんどいないのだ。

だから私は、雅人の高校ではきっと出会いもないだろうし、何より「雅人はそんなことをする人じゃない」と、彼の真っ直ぐな優しさを疑いもしなかった。
新しい環境への不安はまだ少し残っているけれど、雅人への絶対的な安心感が、私を優しく包み込んでくれていた。