君の隣。~一番愛した人の裏切り、泥沼のモラハラ彼氏。傷だらけの私を最後に救ったのは、10年間私を忘れられずにいた「親友の元彼」でした~

新太と話をする、約束の当日。

部活が始まる前、私は部室で2人きりになったタイミングで、美波に自分の決意を打ち明けた。

「今日、部活のあとに新太と会う約束してるんだ。……今の私の気持ちを正直に話して、それでもいいって言ってくれたら、付き合ってみようと思う」

私の言葉に、美波は一瞬だけ驚いたように目を見開いた。けれどすぐに嬉しそうな表情を浮かべると、何度も大きく頷いてくれた。

「うん、うん! 自分の気持ち、素直に話せるといいね!」

「……ちなみにさ、勇斗には……話してないの?」

「勇斗?」

不意に予想していなかった名前が出てきて、私は少しだけ首を傾げた。

「勇斗には、まだ何も話してないよ。何で?」

「ううん、なんでもない! がんばってね!」

美波はいつもの明るい笑顔でそう言って私の背中をポンと叩いた。
けれど、その瞬間に見せた少し複雑そうな表情が、なぜかほんの少しだけ私の胸に残った。

……

お昼過ぎに部活が終わり、鞄からスマホを取り出す。

学校の近くまで来てくれているはずの新太に、さっそくLINEを送った。

『部活おわったよ〜』

送信ボタンを押すと、すぐに手元のスマホが震えた。

『おつかれ〜。高校の近くの北公園で待ってる』

画面を閉じて、私は北公園へと向かう。

公園が近づくにつれて、心臓がバクバクと激しく主張し始める。

今までならただの友達に会いに行くだけだったはずなのに、これからは違う関係になるかもしれないんだと思うと、どうしようもなく緊張してきた。

公園の入り口をくぐると、ベンチの近くで、新太が私の姿を見つけてパッと表情を輝かせた。

「おつかれー! これ、飲む? 買ってきた」

差し出された冷たい缶ジュースを、私は両手で受け取る。

「あ、ありがとう! ……待たせちゃったよね、ごめんね」

「そんなことないよ、俺もさっき着いたばっか。……ほら、そこ座ろうぜ」

促されるまま、私たちは並んで公園のベンチに腰掛けた。

緊張で強張った私の指先を、冷たいジュースの結露がじんわりと濡らしていく。

私は深く息を吸い込んで、膝の上の缶をぎゅっと握りしめた。

「……返事、待っててくれてありがとう。新太から気持ちを伝えてもらってから、この1週間、自分なりにずっと考えてたんだ」

新太は何も言わず、ただ静かに、私の言葉を待ってくれている。

「新太のこと、一緒にいて楽しいし気になってる。だから、付き合ってみたいって思う……。
でも、まだ新太ほど一途な気持ちになれているわけじゃなくて、こんな中途半端な気持ちのまま付き合っていいものか、どうなのかなって……」

だんだんと声が小さくなっていく。それでも、最後の力を振り絞って新太の目を見た。

「こんな気持ちでもよかったら……私と付き合ってくれる?」

そのあとずっと恥ずかしくて、自分の足元かジュースの缶しか見られなかった。

話し終えて、恐る恐る新太の顔を覗き込むと――。

そこには、今まで見たこともないような、心からの満面の笑顔があった。

「あたりまえだろ!」

新太は弾けたような声で言って、愛おしそうに私の目をまっすぐ見つめた。

「俺のこと好きになるよ! 絶対!」

いたずらっぽく、でも自信たっぷりに笑ったあと、新太は少し声を和らげる。

「……っていうのは冗談で。それくらい好きになってもらえるように、俺、これからもっと頑張るから」

新太はこれ以上ないくらいホッとした顔をして、ふうっと大きく息を吐き出した。

「あー、ありがとう……! 本当によかった〜……!」

心から安心したように笑う新太を見て、私の胸の奥にも、あたたかい灯がともったような気がした。学校での噂なんて、この笑顔の前ではどうでもよくなっていた。

そうして――私たちは付き合うことになった。