新太と話をする、約束の当日。
部活が始まる前、私は部室で2人きりになったタイミングで、美波に自分の決意を打ち明けた。
「今日、部活のあとに新太と会う約束してるんだ。……今の私の気持ちを正直に話して、それでもいいって言ってくれたら、付き合ってみようと思う」
私の言葉に、美波は一瞬だけ驚いたように目を見開いた。けれどすぐに嬉しそうな表情を浮かべると、何度も大きく頷いてくれた。
「うん、うん! 自分の気持ち、素直に話せるといいね!」
「……ちなみにさ、勇斗には……話してないの?」
「勇斗?」
不意に予想していなかった名前が出てきて、私は少しだけ首を傾げた。
「勇斗には、まだ何も話してないよ。何で?」
「ううん、なんでもない! がんばってね!」
美波はいつもの明るい笑顔でそう言って私の背中をポンと叩いた。
けれど、その瞬間に見せた少し複雑そうな表情が、なぜかほんの少しだけ私の胸に残った。
……
お昼過ぎに部活が終わり、鞄からスマホを取り出す。
学校の近くまで来てくれているはずの新太に、さっそくLINEを送った。
『部活おわったよ〜』
送信ボタンを押すと、すぐに手元のスマホが震えた。
『おつかれ〜。高校の近くの北公園で待ってる』
画面を閉じて、私は北公園へと向かう。
公園が近づくにつれて、心臓がバクバクと激しく主張し始める。
今までならただの友達に会いに行くだけだったはずなのに、これからは違う関係になるかもしれないんだと思うと、どうしようもなく緊張してきた。
公園の入り口をくぐると、ベンチの近くで、新太が私の姿を見つけてパッと表情を輝かせた。
「おつかれー! これ、飲む? 買ってきた」
差し出された冷たい缶ジュースを、私は両手で受け取る。
「あ、ありがとう! ……待たせちゃったよね、ごめんね」
「そんなことないよ、俺もさっき着いたばっか。……ほら、そこ座ろうぜ」
促されるまま、私たちは並んで公園のベンチに腰掛けた。
緊張で強張った私の指先を、冷たいジュースの結露がじんわりと濡らしていく。
私は深く息を吸い込んで、膝の上の缶をぎゅっと握りしめた。
「……返事、待っててくれてありがとう。新太から気持ちを伝えてもらってから、この1週間、自分なりにずっと考えてたんだ」
新太は何も言わず、ただ静かに、私の言葉を待ってくれている。
「新太のこと、一緒にいて楽しいし気になってる。だから、付き合ってみたいって思う……。
でも、まだ新太ほど一途な気持ちになれているわけじゃなくて、こんな中途半端な気持ちのまま付き合っていいものか、どうなのかなって……」
だんだんと声が小さくなっていく。それでも、最後の力を振り絞って新太の目を見た。
「こんな気持ちでもよかったら……私と付き合ってくれる?」
そのあとずっと恥ずかしくて、自分の足元かジュースの缶しか見られなかった。
話し終えて、恐る恐る新太の顔を覗き込むと――。
そこには、今まで見たこともないような、心からの満面の笑顔があった。
「あたりまえだろ!」
新太は弾けたような声で言って、愛おしそうに私の目をまっすぐ見つめた。
「俺のこと好きになるよ! 絶対!」
いたずらっぽく、でも自信たっぷりに笑ったあと、新太は少し声を和らげる。
「……っていうのは冗談で。それくらい好きになってもらえるように、俺、これからもっと頑張るから」
新太はこれ以上ないくらいホッとした顔をして、ふうっと大きく息を吐き出した。
「あー、ありがとう……! 本当によかった〜……!」
心から安心したように笑う新太を見て、私の胸の奥にも、あたたかい灯がともったような気がした。学校での噂なんて、この笑顔の前ではどうでもよくなっていた。
そうして――私たちは付き合うことになった。
部活が始まる前、私は部室で2人きりになったタイミングで、美波に自分の決意を打ち明けた。
「今日、部活のあとに新太と会う約束してるんだ。……今の私の気持ちを正直に話して、それでもいいって言ってくれたら、付き合ってみようと思う」
私の言葉に、美波は一瞬だけ驚いたように目を見開いた。けれどすぐに嬉しそうな表情を浮かべると、何度も大きく頷いてくれた。
「うん、うん! 自分の気持ち、素直に話せるといいね!」
「……ちなみにさ、勇斗には……話してないの?」
「勇斗?」
不意に予想していなかった名前が出てきて、私は少しだけ首を傾げた。
「勇斗には、まだ何も話してないよ。何で?」
「ううん、なんでもない! がんばってね!」
美波はいつもの明るい笑顔でそう言って私の背中をポンと叩いた。
けれど、その瞬間に見せた少し複雑そうな表情が、なぜかほんの少しだけ私の胸に残った。
……
お昼過ぎに部活が終わり、鞄からスマホを取り出す。
学校の近くまで来てくれているはずの新太に、さっそくLINEを送った。
『部活おわったよ〜』
送信ボタンを押すと、すぐに手元のスマホが震えた。
『おつかれ〜。高校の近くの北公園で待ってる』
画面を閉じて、私は北公園へと向かう。
公園が近づくにつれて、心臓がバクバクと激しく主張し始める。
今までならただの友達に会いに行くだけだったはずなのに、これからは違う関係になるかもしれないんだと思うと、どうしようもなく緊張してきた。
公園の入り口をくぐると、ベンチの近くで、新太が私の姿を見つけてパッと表情を輝かせた。
「おつかれー! これ、飲む? 買ってきた」
差し出された冷たい缶ジュースを、私は両手で受け取る。
「あ、ありがとう! ……待たせちゃったよね、ごめんね」
「そんなことないよ、俺もさっき着いたばっか。……ほら、そこ座ろうぜ」
促されるまま、私たちは並んで公園のベンチに腰掛けた。
緊張で強張った私の指先を、冷たいジュースの結露がじんわりと濡らしていく。
私は深く息を吸い込んで、膝の上の缶をぎゅっと握りしめた。
「……返事、待っててくれてありがとう。新太から気持ちを伝えてもらってから、この1週間、自分なりにずっと考えてたんだ」
新太は何も言わず、ただ静かに、私の言葉を待ってくれている。
「新太のこと、一緒にいて楽しいし気になってる。だから、付き合ってみたいって思う……。
でも、まだ新太ほど一途な気持ちになれているわけじゃなくて、こんな中途半端な気持ちのまま付き合っていいものか、どうなのかなって……」
だんだんと声が小さくなっていく。それでも、最後の力を振り絞って新太の目を見た。
「こんな気持ちでもよかったら……私と付き合ってくれる?」
そのあとずっと恥ずかしくて、自分の足元かジュースの缶しか見られなかった。
話し終えて、恐る恐る新太の顔を覗き込むと――。
そこには、今まで見たこともないような、心からの満面の笑顔があった。
「あたりまえだろ!」
新太は弾けたような声で言って、愛おしそうに私の目をまっすぐ見つめた。
「俺のこと好きになるよ! 絶対!」
いたずらっぽく、でも自信たっぷりに笑ったあと、新太は少し声を和らげる。
「……っていうのは冗談で。それくらい好きになってもらえるように、俺、これからもっと頑張るから」
新太はこれ以上ないくらいホッとした顔をして、ふうっと大きく息を吐き出した。
「あー、ありがとう……! 本当によかった〜……!」
心から安心したように笑う新太を見て、私の胸の奥にも、あたたかい灯がともったような気がした。学校での噂なんて、この笑顔の前ではどうでもよくなっていた。
そうして――私たちは付き合うことになった。
