「嫌じゃねえんだよ!! お前は俺の言うこと聞いてりゃいいんだよ!!」
ギシッ!!とベッドが大きくきしみ、両手首を頭上に力任せに押さえつけられた。
身動きを完全に封じられ、服を乱暴にはだけ取られていく。
「やめて……っ、柊、お願いだからやめてよ……っ!!」
必死の拒絶も虚しく、逃げ場のない男の重い体温が容赦なく覆いかぶさってきた。
そこに、愛も気遣いも一切なかった。
ただ、彼自身の身勝手な支配欲と、別れを告げられた怒りをぶつけるためだけの、理不尽で屈辱的な時間。
手首に食い込む指の激痛、首元にかかる荒い吐息、そして肌に直接触れる彼の体温が、吐き気がするほどおそろしかった。
やがて、私の体からすうっと力が抜けていった。
抵抗する気力も、恐怖を叫ぶ声も失われ、私の意識はどこか遠くへ切り離されていく。
涙すら出ない深い絶望の中で、私はただ固まり、暗い天井の模様を薄開きの瞳で見つめながら、早くこの地獄が終わることだけを耐え忍んでいた——。
ーーーーーーーーーー
どれくらいの時間が流れただろう。
事が終わると、柊は荒い呼吸を吐きながら私から離れ、ベッドの端へ腰掛けた。
床に落ちていたTシャツを頭からかぶり、スウェットに脚を通すと、無言でベランダへと通じる窓を開ける。
サァッと、冷たい夜風が部屋の中に吹き込んでくる。
ライターのカチッという金属音が響き、夜の闇の中に小さな火の粉が揺れた。
柊はベランダの手すりに肘をかけ、吐き出した白い煙がゆらゆらと溶けていくのを眺めている。
今、この隙に立ち上がって部屋を飛び出そうか——。
一瞬そんな考えが頭をよぎったけれど、足がすくんで動かない。
もし鍵を開ける音で気づかれ、追いかけられて捕まったら、次はいったい何をされるか分からない。
その死ぬほどの恐怖に縛られ、私は乱れた服を震える手で小さくかき集め、ベッドの上で丸まっていることしかできなかった。
やがて、煙草を吸い終えた柊がベランダから戻ってきた。
サッシを静かに閉め、部屋の中へ入ってくる足音。
私は身をすくめて固くなった。また怒鳴られるのか、暴力を振るわれるのかと全身の血が引いていく。
けれど——。
「……ごめんな、柚那」
聞こえてきたのは、さっきまでの激昂が嘘のような、猫なで声の甘い囁きだった。
柊はベッドの上に腰を下ろすと、怯えて丸まっている私を、そっと背中から優しく抱きしめてきた。
「俺、柚那が好きすぎて……頭がおかしくなりそうだったんだよ。『別れる』なんて言うからさ、すごく怖かったんだ……。お前、もうどこにも行かないよな?」
自分の暴力を棚に上げ、まるで被害者のような顔をしてすがりついてくる。
さっきまで私を壁に叩きつけ、無理やり身体を重ねてきた男が、今は傷ついた子供のように甘え、愛おしそうに髪を撫でてくる。
その不気味な甘やかしと、首元に触れる彼の唇の感触に、猛烈な寒気と激しい吐き気がこみ上げた。
(……あぁ、駄目だ……)
背中から伝わる彼の体温。
今まで積み重ねてきた思い出も、付き合い始めの優しさも、残っていたわずかな情も未練も——。
すべてが音を立てて砕け散り、跡形もなく消え去った。
(この人……本当に、おかしいんだ……)
悲しみも、怒りも、涙もすっかり枯れ果てた。
私の心は氷のように冷え切り、長かった愚かな迷いから、完全に目が覚めていた。
(……まともに向き合って、話し合おうとしたのが馬鹿みたいだ)
自分の思い通りにならなければ、力でねじ伏せてくる。言葉で納得させて綺麗に終わらせるなんて、最初から無理だったのだ。
無事に生きてこの部屋を出るためには、今は所有物として従順な顔を見せるしかない。
「……うん。ごめんなさい……もう、言わないから」
私がかすれた声でそう呟くと、柊は満足そうに微笑み、私の頭をポンポンと叩いた。
「わかればいいんだよ。お前には俺しかいないんだからさ」
機嫌を直した彼に、私はなるべく自然を装って告げた。
「……明日、仕事早いから……もう帰るね」
「ん、そっか。気をつけて帰れよ。模擬結婚式のこと、その友達によろしく言っとけよ」
完全に私を支配下に戻したと信じて疑わない柊は、あっさりと私を解放した。
乱れた衣服を整え、逃げるようにその部屋を後にした。
夜の冷たい空気が、痛む肌と痺れた体を刺す。
命からがら自分の部屋へ辿り着き、重いドアを閉めた瞬間、私はそのまま床に崩れ落ちた。
暗闇に包まれた部屋で、冷めきった瞳で虚空を見つめる。
もう、あの男に納得してもらうための言葉を探す必要なんてない。
まずは、強制的に返信させられたあの「模擬結婚式」をなんとかやり過ごすこと。
そして、彼が反論も手出しもできないようなやり方で、今度こそ完全にこの関係を終わらせる——。
静かな暗闇の中、私の心はただ冷たく冴え渡っていた——。
冷酷な支配から逃れ、静かに決意を固めた柚那。彼女のこれからの歩みを応援してくれる方は、ぜひ【本棚登録】や【いいね♡】をお願いします✨
ギシッ!!とベッドが大きくきしみ、両手首を頭上に力任せに押さえつけられた。
身動きを完全に封じられ、服を乱暴にはだけ取られていく。
「やめて……っ、柊、お願いだからやめてよ……っ!!」
必死の拒絶も虚しく、逃げ場のない男の重い体温が容赦なく覆いかぶさってきた。
そこに、愛も気遣いも一切なかった。
ただ、彼自身の身勝手な支配欲と、別れを告げられた怒りをぶつけるためだけの、理不尽で屈辱的な時間。
手首に食い込む指の激痛、首元にかかる荒い吐息、そして肌に直接触れる彼の体温が、吐き気がするほどおそろしかった。
やがて、私の体からすうっと力が抜けていった。
抵抗する気力も、恐怖を叫ぶ声も失われ、私の意識はどこか遠くへ切り離されていく。
涙すら出ない深い絶望の中で、私はただ固まり、暗い天井の模様を薄開きの瞳で見つめながら、早くこの地獄が終わることだけを耐え忍んでいた——。
ーーーーーーーーーー
どれくらいの時間が流れただろう。
事が終わると、柊は荒い呼吸を吐きながら私から離れ、ベッドの端へ腰掛けた。
床に落ちていたTシャツを頭からかぶり、スウェットに脚を通すと、無言でベランダへと通じる窓を開ける。
サァッと、冷たい夜風が部屋の中に吹き込んでくる。
ライターのカチッという金属音が響き、夜の闇の中に小さな火の粉が揺れた。
柊はベランダの手すりに肘をかけ、吐き出した白い煙がゆらゆらと溶けていくのを眺めている。
今、この隙に立ち上がって部屋を飛び出そうか——。
一瞬そんな考えが頭をよぎったけれど、足がすくんで動かない。
もし鍵を開ける音で気づかれ、追いかけられて捕まったら、次はいったい何をされるか分からない。
その死ぬほどの恐怖に縛られ、私は乱れた服を震える手で小さくかき集め、ベッドの上で丸まっていることしかできなかった。
やがて、煙草を吸い終えた柊がベランダから戻ってきた。
サッシを静かに閉め、部屋の中へ入ってくる足音。
私は身をすくめて固くなった。また怒鳴られるのか、暴力を振るわれるのかと全身の血が引いていく。
けれど——。
「……ごめんな、柚那」
聞こえてきたのは、さっきまでの激昂が嘘のような、猫なで声の甘い囁きだった。
柊はベッドの上に腰を下ろすと、怯えて丸まっている私を、そっと背中から優しく抱きしめてきた。
「俺、柚那が好きすぎて……頭がおかしくなりそうだったんだよ。『別れる』なんて言うからさ、すごく怖かったんだ……。お前、もうどこにも行かないよな?」
自分の暴力を棚に上げ、まるで被害者のような顔をしてすがりついてくる。
さっきまで私を壁に叩きつけ、無理やり身体を重ねてきた男が、今は傷ついた子供のように甘え、愛おしそうに髪を撫でてくる。
その不気味な甘やかしと、首元に触れる彼の唇の感触に、猛烈な寒気と激しい吐き気がこみ上げた。
(……あぁ、駄目だ……)
背中から伝わる彼の体温。
今まで積み重ねてきた思い出も、付き合い始めの優しさも、残っていたわずかな情も未練も——。
すべてが音を立てて砕け散り、跡形もなく消え去った。
(この人……本当に、おかしいんだ……)
悲しみも、怒りも、涙もすっかり枯れ果てた。
私の心は氷のように冷え切り、長かった愚かな迷いから、完全に目が覚めていた。
(……まともに向き合って、話し合おうとしたのが馬鹿みたいだ)
自分の思い通りにならなければ、力でねじ伏せてくる。言葉で納得させて綺麗に終わらせるなんて、最初から無理だったのだ。
無事に生きてこの部屋を出るためには、今は所有物として従順な顔を見せるしかない。
「……うん。ごめんなさい……もう、言わないから」
私がかすれた声でそう呟くと、柊は満足そうに微笑み、私の頭をポンポンと叩いた。
「わかればいいんだよ。お前には俺しかいないんだからさ」
機嫌を直した彼に、私はなるべく自然を装って告げた。
「……明日、仕事早いから……もう帰るね」
「ん、そっか。気をつけて帰れよ。模擬結婚式のこと、その友達によろしく言っとけよ」
完全に私を支配下に戻したと信じて疑わない柊は、あっさりと私を解放した。
乱れた衣服を整え、逃げるようにその部屋を後にした。
夜の冷たい空気が、痛む肌と痺れた体を刺す。
命からがら自分の部屋へ辿り着き、重いドアを閉めた瞬間、私はそのまま床に崩れ落ちた。
暗闇に包まれた部屋で、冷めきった瞳で虚空を見つめる。
もう、あの男に納得してもらうための言葉を探す必要なんてない。
まずは、強制的に返信させられたあの「模擬結婚式」をなんとかやり過ごすこと。
そして、彼が反論も手出しもできないようなやり方で、今度こそ完全にこの関係を終わらせる——。
静かな暗闇の中、私の心はただ冷たく冴え渡っていた——。
冷酷な支配から逃れ、静かに決意を固めた柚那。彼女のこれからの歩みを応援してくれる方は、ぜひ【本棚登録】や【いいね♡】をお願いします✨
