専門学校の卒業式を数日後に控えた、ある放課後のこと。
私は親友の優奈と、駅前の静かなカフェに向かい、温かい紅茶を挟んで向かい合っていた。
昨夜、柊の部屋で彼に放置され、見かねたお母さんに夜のパーキングまで送ってもらった出来事。
その一部始終を優奈に打ち明けると、彼女は眉をひそめ、心底呆れたように大きなため息をついた。
「……ありえないよ、本当に。夜の23時に女の子を一人で放置して寝落ちなんて……。お母さんが送ってくれたから良かったものの、もし何かあったらどうするつもりだったの?」
「……うん。お母さんには本当に申し訳なかったし、すごく情けなかった……」
カップから立ち上る湯気をじっと見つめながら、私は消え入りそうな声で呟いた。
優奈は静かに紅茶のカップを置くと、私をじっと見つめ、意を決したように真剣な眼差しを向けてきた。
「ねぇ、柚那。専門学校の卒業も、社会人になるのももうすぐだよ。……柊とのこと、もう終わりにしたら?」
「……っ」
優奈のまっすぐな言葉に、胸の中に広がったのは悲しみでも動揺でもなく、驚くほどの冷ややかな納得だった。
(……そうだ。私……とっくに、柊のこと好きじゃなくなってたんだ。ずっと、自分の本当の気持ちから目を背けていただけなんだ)
その瞬間、胸の奥でずっと絡まっていた重い糸がほどけ、長年自分を縛り付けていた洗脳にも似た思い込みが、すーっと解けていくような感覚があった。
あんなに傷つけられてもすがりつき、必死に繋ぎ止めようとしていたもの。
それは彼への愛でも何でもなく、ただの『情』と『慣れ』、そして一人になることへの恐怖だったのだ。
(なんで……なんでもっと早く、自分のこの気持ちに気づかなかったんだろう……)
ずっと目を背けていた自分の本心に気づき、静かな衝撃が胸を突き抜ける。
「……柚那?」
黙り込んだ私を心配そうに覗き込んでくる優奈に、私はゆっくりと顔を上げた。
「……うん。優奈の言う通りだね。私……とっくに柊のこと、好きじゃなくなってたんだと思う」
「え……」
思ってもみなかった私のハッキリとした言葉に、優奈はパチパチと目を丸くさせた。
「私、ずっと好きだから離れられないんだと思ってた。でも違ったよ。ただの情で執着して、離れるのが怖かっただけだった……。もっと早く気づくべきだったんだよね」
自嘲気味に微笑む私に、優奈は「柚那……」と胸を痛めるような表情を浮かべる。
「……じゃあ、柊に別れるって伝えるの?」
「うん、別れたい。……でも」
私は一度言葉を切り、困ったように眉をひそめた。
「今まで『別れたい』なんて言ったことないけど……ちょっとでも柊の思い通りにならないとすぐ不機嫌になって逆ギレされたり、話をうやむやに逃げられたりしてきたでしょ? だから、どう切り出せばいいのか分からなくて……」
「あぁ……確かに。そういうところあるよね、柊……」
優奈は心底嫌そうに顔をしかめ、大きくうなずいた。
「うん。社会人になる前に、綺麗に区切りをつけたいんだけどね……。どうにかして、ちゃんと話し合えるタイミングを見極めなきゃと思ってて」
私の言葉に、優奈は優しく私の手に自分の手を重ねてくれた。
「そっか……。柚那がそう決めたなら、私は全力で応援するからね。一人で抱え込まないで、いつでも相談して」
「ありがとう、優奈……」
親友の温かい温もりに感謝しながら、私は心の中で静かに誓っていた。
(もう流されない。ちゃんとタイミングを見極めて、この泥沼の関係を絶対に終わらせるんだ——)
私は親友の優奈と、駅前の静かなカフェに向かい、温かい紅茶を挟んで向かい合っていた。
昨夜、柊の部屋で彼に放置され、見かねたお母さんに夜のパーキングまで送ってもらった出来事。
その一部始終を優奈に打ち明けると、彼女は眉をひそめ、心底呆れたように大きなため息をついた。
「……ありえないよ、本当に。夜の23時に女の子を一人で放置して寝落ちなんて……。お母さんが送ってくれたから良かったものの、もし何かあったらどうするつもりだったの?」
「……うん。お母さんには本当に申し訳なかったし、すごく情けなかった……」
カップから立ち上る湯気をじっと見つめながら、私は消え入りそうな声で呟いた。
優奈は静かに紅茶のカップを置くと、私をじっと見つめ、意を決したように真剣な眼差しを向けてきた。
「ねぇ、柚那。専門学校の卒業も、社会人になるのももうすぐだよ。……柊とのこと、もう終わりにしたら?」
「……っ」
優奈のまっすぐな言葉に、胸の中に広がったのは悲しみでも動揺でもなく、驚くほどの冷ややかな納得だった。
(……そうだ。私……とっくに、柊のこと好きじゃなくなってたんだ。ずっと、自分の本当の気持ちから目を背けていただけなんだ)
その瞬間、胸の奥でずっと絡まっていた重い糸がほどけ、長年自分を縛り付けていた洗脳にも似た思い込みが、すーっと解けていくような感覚があった。
あんなに傷つけられてもすがりつき、必死に繋ぎ止めようとしていたもの。
それは彼への愛でも何でもなく、ただの『情』と『慣れ』、そして一人になることへの恐怖だったのだ。
(なんで……なんでもっと早く、自分のこの気持ちに気づかなかったんだろう……)
ずっと目を背けていた自分の本心に気づき、静かな衝撃が胸を突き抜ける。
「……柚那?」
黙り込んだ私を心配そうに覗き込んでくる優奈に、私はゆっくりと顔を上げた。
「……うん。優奈の言う通りだね。私……とっくに柊のこと、好きじゃなくなってたんだと思う」
「え……」
思ってもみなかった私のハッキリとした言葉に、優奈はパチパチと目を丸くさせた。
「私、ずっと好きだから離れられないんだと思ってた。でも違ったよ。ただの情で執着して、離れるのが怖かっただけだった……。もっと早く気づくべきだったんだよね」
自嘲気味に微笑む私に、優奈は「柚那……」と胸を痛めるような表情を浮かべる。
「……じゃあ、柊に別れるって伝えるの?」
「うん、別れたい。……でも」
私は一度言葉を切り、困ったように眉をひそめた。
「今まで『別れたい』なんて言ったことないけど……ちょっとでも柊の思い通りにならないとすぐ不機嫌になって逆ギレされたり、話をうやむやに逃げられたりしてきたでしょ? だから、どう切り出せばいいのか分からなくて……」
「あぁ……確かに。そういうところあるよね、柊……」
優奈は心底嫌そうに顔をしかめ、大きくうなずいた。
「うん。社会人になる前に、綺麗に区切りをつけたいんだけどね……。どうにかして、ちゃんと話し合えるタイミングを見極めなきゃと思ってて」
私の言葉に、優奈は優しく私の手に自分の手を重ねてくれた。
「そっか……。柚那がそう決めたなら、私は全力で応援するからね。一人で抱え込まないで、いつでも相談して」
「ありがとう、優奈……」
親友の温かい温もりに感謝しながら、私は心の中で静かに誓っていた。
(もう流されない。ちゃんとタイミングを見極めて、この泥沼の関係を絶対に終わらせるんだ——)
