君の隣。 〜一番愛した人の裏切り、泥沼のモラハラ彼氏。傷だらけの私を最後に救ったのは、出会って10年、ずっと私だけを思い続けてくれた「親友の元彼」でした〜

​あのカフェで明里に言われた言葉がどこか胸に引っかかったまま、あっという間に月日は流れていった。

専門学校の卒業も目前に迫った1月。

私たちは、人生の大きな節目である成人式の日を迎えていた。

まだ外が薄暗い早朝から起き出し、メイクを済ませて予約していた美容院へ向かう。

今日着る振袖は、叔母さんが昔、自分の結婚式で着用したという大切なものだった。
シックな黒地をベースに、絢爛なゴールドの刺繍が惜しみなく施された、とても艶やかで大人っぽい一枚。帯は母が持っていたシルバーのものを合わせ、髪型はすっきりとカッコよくクールなアップスタイルに仕上げてもらった。

「柚那ちゃん、本当にかっこよくて綺麗! お着物に負けてないわよ」

着付け師さんに褒められ、完成した姿を姿見に映すと、なんだか背筋がすっと伸びる気がした。

自宅へ戻り、祖父母や両親に振袖姿をお披露目して笑顔を交わしていると、玄関のインターホンが鳴った。

「柚那ー! おはよー! ついたよ!」

振袖を身にまとった幼馴染の真美が、嬉しそうに迎えに来てくれたのだ。
私たちは「綺麗!」「可愛い!」とお互いの晴れ姿を褒め合いながら、会場である懐かしい小学校へと向かった。

ーーーーーーーーーー

会場の校庭に着くと、新成人になった懐かしい同級生たちで溢れかえっていた。

「わ、柚那ー!? 久しぶりー!!」

「柚那の振袖、黒とゴールドでめちゃくちゃかっこいい! すごく似合ってる!」

次々と集まってくる友人たちから歓声が上がり、一緒に写真を撮ったり、近況を報告し合ったりと、笑顔の絶えない賑やかな時間が流れる。
過酷だった就活を乗り越えた達成感も手伝って、私は心から晴れやかな気持ちでいっぱいだった。

式典が無事に終わり、会場が少しずつざわめきを取り戻した頃。

「みんなで二次会の前に、駅前のプリクラ撮りに行こうよ!」

誰かがそう提案し、大勢で賑やかに移動することになった。

本当はこの後の二次会にも参加したかった。
けれど、私の成人式のあと、わざわざスーツを着て地元まで私に会いに来る予定になっている柊のことを考えると、参加した後の嫉妬や面倒な不機嫌さが目に見えていたため、私は涙をのんで二次会を断っていたのだ。

(でも、柊が迎えに来るまでまだ少し時間があるし……プリクラくらいなら大丈夫よね)

そう思い直し、私はみんなの後をついて駅前の大きなゲームセンターへと向かった。

休日のゲームセンターは、成人式を終えた色鮮やかな着物姿の若者たちでごった返していた。
みんなで順番にプリクラ機に入り、テンポよく撮影を終える。

「うわ、今のプリクラすごい盛れるー!」

「写真出てくるまでちょっと待とう!」

はしゃぐ友人たちの輪から少し離れ、印刷を待っていた、まさにその時だった。

「……柚那?」

背後から、ふいに低く聞き慣れた声で名前を呼ばれた。

「……え?」

驚いて振り返った瞬間、視界に飛び込んできた人影に、私は思わず目を見張った。

そこに立っていたのは、スーツ姿で少し大人びた――新太だった。

「っ……新太!? なんでここに……?」

「あ……いや、俺の地元の近くに大きなゲーセンがないからさ。みんなでこっちに来てて……」

言いかけた新太の言葉が、ふっと途切れた。

じっと私を見つめたまま、息をのむように言葉を失っている。

私から視線を外せない新太に対し、私は特に胸が波立つこともなく、ただ自然に彼の視線を受け止めていた。

やがて新太は照れくさそうに笑うと、どこか素直な声で言った。

「……すごい綺麗だな。それに、なんだか大人っぽくなったな。あのさ、卒業式ぶりだし、せっかくだから写真……一緒に撮らない?」

どこか少し照れくさそうに尋ねてくる新太に対し、私はふっと柔らかく微笑んだ。

「うん、いいよ! 写真撮ろう」

わだかまりも気負いもなく、私は軽やかに頷いていたのだった。