柊と付き合うことになったという報告を、勇斗に伝える必要があることは最初からわかっていた。
けれど、なかなか言葉にできず、私はそのことを言えないまま数日が過ぎていた。
高校を卒業してから、勇斗と直接会う機会は一度もなかった。
それでも、ふたりの繋がりが完全に途切れることはなかった。
ふたりで決めたわけでもないのに、2週間に1回ほどのペースで、自然とLINEのやり取りが続いていたのだ。
いつも勇斗の方から『よ! 最近どーよ?』と他愛のないメッセージが届き、それから数日ほど言葉を交わしては、また2週間くらい経った頃に連絡が来る。
付かず離れずのその絶妙な距離感と心地よいテンポが、私の日常の中に当たり前のように溶け込んでいた。
ーーーーーーーーーー
ある日の放課後。
専門学校の授業を終えて帰宅し、自分の部屋で一人でくつろいでいると、机の上のスマホがポコッと音を立ててパッと明るくなった。
画面を見に行くと、勇斗からのLINEが表示されていた。
『よ! 俺さ、バイト変わったんだよ。場所は……』
新しいバイト先での出来事や、相変わらず忙しそうな日常を伝える勇斗の文章。
画面の向こうの彼の変わらない雰囲気にホッとしつつ、私は何通かフランクにやり取りを重ねた。
そして、会話が一区切りついたタイミングで、私は意を決して画面に指を走らせた。
(……ちゃんと、言わなきゃ)
卒業式の日、あんなに綺麗で真っ直ぐな第二ボタンを私に託してくれた勇斗。だからこそ、うやむやにして隠すような真似だけは絶対にしたくなかった。
深呼吸をして、文字を打ち込む。
『勇斗に、言わなきゃいけないことがあって』
一打ち一打ち確認しながら、慎重に言葉を繋ぐ。
『専門学校に入学した時に、同じクラスに男子がふたりいるって話したと思うんだけど……そのうちのひとりの子と、付き合うことになったよ』
送信ボタンを押した瞬間、胸の奥がキュッと締め付けられた。
画面の上の「既読」の文字は、すぐについた。
けれど、いつもならテンポよく返ってくるはずの返信が、しばらくの間途絶えた。
画面の向こうで勇斗がどんな顔をしているのかを想像して、息が苦しくなる。
やがて、画面がぽっと光り、勇斗からのメッセージが届いた。
『そうか』
たったふた文字の後に、少しの空白を挟んで、続く言葉が画面に躍った。
『じゃあ、こうして連絡するのも控えた方が良さそうだな。なんか話したいことがあったらいつでも連絡くれよ』
どこまでも私を気遣い、彼氏ができた私に配慮して、スッと身を引こうとする勇斗らしい優しさ。
自分の気持ちよりも私の立場を一番に考えてくれるその温かさが、痛いくらいに胸に染みた。
『うん、わかった。ありがとう』
自分からそう返信を送ったものの、送信した文を見つめているうちに、視界がじわじわと滲んできた。
(……もう、勇斗からこうして連絡が来ることは、なくなっちゃうのかな)
高校を卒業しても、いつでも当たり前のように自分の隣にいてくれた勇斗の存在。
これから先、彼とやり取りすることが無くなるのかもしれないと思うと、胸の奥にポッカリと大きな穴が空いたような、どうしようもない寂しさがこみ上げてきた。
静まり返った部屋の中で、暗くなったスマホの画面を見つめながら、私は目元にじわっと滲む熱いものをそっと指先で押さえた。
けれど、なかなか言葉にできず、私はそのことを言えないまま数日が過ぎていた。
高校を卒業してから、勇斗と直接会う機会は一度もなかった。
それでも、ふたりの繋がりが完全に途切れることはなかった。
ふたりで決めたわけでもないのに、2週間に1回ほどのペースで、自然とLINEのやり取りが続いていたのだ。
いつも勇斗の方から『よ! 最近どーよ?』と他愛のないメッセージが届き、それから数日ほど言葉を交わしては、また2週間くらい経った頃に連絡が来る。
付かず離れずのその絶妙な距離感と心地よいテンポが、私の日常の中に当たり前のように溶け込んでいた。
ーーーーーーーーーー
ある日の放課後。
専門学校の授業を終えて帰宅し、自分の部屋で一人でくつろいでいると、机の上のスマホがポコッと音を立ててパッと明るくなった。
画面を見に行くと、勇斗からのLINEが表示されていた。
『よ! 俺さ、バイト変わったんだよ。場所は……』
新しいバイト先での出来事や、相変わらず忙しそうな日常を伝える勇斗の文章。
画面の向こうの彼の変わらない雰囲気にホッとしつつ、私は何通かフランクにやり取りを重ねた。
そして、会話が一区切りついたタイミングで、私は意を決して画面に指を走らせた。
(……ちゃんと、言わなきゃ)
卒業式の日、あんなに綺麗で真っ直ぐな第二ボタンを私に託してくれた勇斗。だからこそ、うやむやにして隠すような真似だけは絶対にしたくなかった。
深呼吸をして、文字を打ち込む。
『勇斗に、言わなきゃいけないことがあって』
一打ち一打ち確認しながら、慎重に言葉を繋ぐ。
『専門学校に入学した時に、同じクラスに男子がふたりいるって話したと思うんだけど……そのうちのひとりの子と、付き合うことになったよ』
送信ボタンを押した瞬間、胸の奥がキュッと締め付けられた。
画面の上の「既読」の文字は、すぐについた。
けれど、いつもならテンポよく返ってくるはずの返信が、しばらくの間途絶えた。
画面の向こうで勇斗がどんな顔をしているのかを想像して、息が苦しくなる。
やがて、画面がぽっと光り、勇斗からのメッセージが届いた。
『そうか』
たったふた文字の後に、少しの空白を挟んで、続く言葉が画面に躍った。
『じゃあ、こうして連絡するのも控えた方が良さそうだな。なんか話したいことがあったらいつでも連絡くれよ』
どこまでも私を気遣い、彼氏ができた私に配慮して、スッと身を引こうとする勇斗らしい優しさ。
自分の気持ちよりも私の立場を一番に考えてくれるその温かさが、痛いくらいに胸に染みた。
『うん、わかった。ありがとう』
自分からそう返信を送ったものの、送信した文を見つめているうちに、視界がじわじわと滲んできた。
(……もう、勇斗からこうして連絡が来ることは、なくなっちゃうのかな)
高校を卒業しても、いつでも当たり前のように自分の隣にいてくれた勇斗の存在。
これから先、彼とやり取りすることが無くなるのかもしれないと思うと、胸の奥にポッカリと大きな穴が空いたような、どうしようもない寂しさがこみ上げてきた。
静まり返った部屋の中で、暗くなったスマホの画面を見つめながら、私は目元にじわっと滲む熱いものをそっと指先で押さえた。
