章 根源
週末が明け、新しい週が始まった月曜日の朝。
学校の最寄り駅の改札を出ると、人混みの中で私を見つけた優奈が、パッと顔を輝かせて駆け寄ってきた。
「柚那ー! おはよー!!」
開口一番、優奈の目はランランと好奇心に満ちていた。
「もうっ、土曜日の夜に『付き合った』なんてLINEだけ送ってきて! 詳細が気になりすぎて昨日ずっとソワソワしてたんだからね!?」
「あはは、ごめんごめん……」
校舎へ向かう通学路を歩きながら、優奈からの質問攻めが始まった。
どこへ行ったのか、どんな風に告白されたのか。
照れくささに顔を赤くしながら「穴場の夜景展望台に連れていってもらって……」と小声で打ち明けると、優奈は「なにそれ、ロマンチックすぎるー!」と自分のことのように黄色い声を上げた。
話に花を咲かせているうちに、あっという間に学校へ到着する。
(柊と付き合ってから、学校で顔を合わせるのは今日が初めてだ……)
教室のドアが近づくにつれて、心臓の鼓動がドクドクと速くなる。
週末に彼女になったばかりの彼と、どんな顔をして挨拶すればいいんだろう。急に猛烈な照れくささが込み上げてきて、ドアノブを握る手が少し震えた。
意を決して、ガラリと教室の扉を開ける。
朝の光が差し込む教室の中に、柊の姿はすでにあった。
視線がバチッと重なった瞬間、私の胸の奥が跳ねた。
「あ、柚那! おはよ!」
私に気づいた柊が、いつもの人懐っこい笑顔でパッと手を振った。
ちゃん外しの「柚那」という響きに、耳の奥が熱くなる。
「朝、LINEしたのに気づかなかった?」
「おはよ! え、嘘、全然気づかなかった! もう学校着いてたんだね、ごめん〜!」
自分のスマホを確認する余裕もなかったことを思い出して少し慌てて返すと、柊は「全然いいよー!」と大らかに笑ってくれた。
彼は同じクラスの悟(さとる)くんと並んで席に着いていたので、私たちもその後ろの席にカバンを置くことにした。
前列に柊と悟くん。そのすぐ後ろに私と優奈。さらにその隣や後ろに愛(あい)と沙莉(さり)。
自由席のときは、自然とこのグループで固まって座るのがいつの間にかお決まりの配置になっていた。
付き合い始めたからといって、学校での私たちの過ごし方が急激に変わるわけではなかった。
同じ空間にいても、昼休みや移動時間はそれぞれの友人グループで過ごすことが多く、お昼ごはんも別々に食べることが多かった。
お互いに友達との時間も大切にしていたし、学校の中でべったりしすぎない適度な距離感が、私にとっても心地よかった。
それでも、すべての授業が終わった放課後は、二人だけの特別な時間だった。
放課後に二人でドライブに出かけたり、たわいもない話をしながら過ごしたり。
帰り道はいつものように彼の運転する車で私の自宅まで安全に送ってもらう。
「じゃあ、また明日ね」
車の助手席から降りて手を振る私に、彼が嬉しそうに微笑み返す。
学校での適度な距離感と、放課後の甘くて穏やかな時間。
それが、付き合い始めた私たち二人の、新しい日常のカタチだった。
——けれど。
幸せな余韻の中で目を閉じると、まだ何も知らない『彼』の顔が、胸の奥で静かに揺れていた——。
週末が明け、新しい週が始まった月曜日の朝。
学校の最寄り駅の改札を出ると、人混みの中で私を見つけた優奈が、パッと顔を輝かせて駆け寄ってきた。
「柚那ー! おはよー!!」
開口一番、優奈の目はランランと好奇心に満ちていた。
「もうっ、土曜日の夜に『付き合った』なんてLINEだけ送ってきて! 詳細が気になりすぎて昨日ずっとソワソワしてたんだからね!?」
「あはは、ごめんごめん……」
校舎へ向かう通学路を歩きながら、優奈からの質問攻めが始まった。
どこへ行ったのか、どんな風に告白されたのか。
照れくささに顔を赤くしながら「穴場の夜景展望台に連れていってもらって……」と小声で打ち明けると、優奈は「なにそれ、ロマンチックすぎるー!」と自分のことのように黄色い声を上げた。
話に花を咲かせているうちに、あっという間に学校へ到着する。
(柊と付き合ってから、学校で顔を合わせるのは今日が初めてだ……)
教室のドアが近づくにつれて、心臓の鼓動がドクドクと速くなる。
週末に彼女になったばかりの彼と、どんな顔をして挨拶すればいいんだろう。急に猛烈な照れくささが込み上げてきて、ドアノブを握る手が少し震えた。
意を決して、ガラリと教室の扉を開ける。
朝の光が差し込む教室の中に、柊の姿はすでにあった。
視線がバチッと重なった瞬間、私の胸の奥が跳ねた。
「あ、柚那! おはよ!」
私に気づいた柊が、いつもの人懐っこい笑顔でパッと手を振った。
ちゃん外しの「柚那」という響きに、耳の奥が熱くなる。
「朝、LINEしたのに気づかなかった?」
「おはよ! え、嘘、全然気づかなかった! もう学校着いてたんだね、ごめん〜!」
自分のスマホを確認する余裕もなかったことを思い出して少し慌てて返すと、柊は「全然いいよー!」と大らかに笑ってくれた。
彼は同じクラスの悟(さとる)くんと並んで席に着いていたので、私たちもその後ろの席にカバンを置くことにした。
前列に柊と悟くん。そのすぐ後ろに私と優奈。さらにその隣や後ろに愛(あい)と沙莉(さり)。
自由席のときは、自然とこのグループで固まって座るのがいつの間にかお決まりの配置になっていた。
付き合い始めたからといって、学校での私たちの過ごし方が急激に変わるわけではなかった。
同じ空間にいても、昼休みや移動時間はそれぞれの友人グループで過ごすことが多く、お昼ごはんも別々に食べることが多かった。
お互いに友達との時間も大切にしていたし、学校の中でべったりしすぎない適度な距離感が、私にとっても心地よかった。
それでも、すべての授業が終わった放課後は、二人だけの特別な時間だった。
放課後に二人でドライブに出かけたり、たわいもない話をしながら過ごしたり。
帰り道はいつものように彼の運転する車で私の自宅まで安全に送ってもらう。
「じゃあ、また明日ね」
車の助手席から降りて手を振る私に、彼が嬉しそうに微笑み返す。
学校での適度な距離感と、放課後の甘くて穏やかな時間。
それが、付き合い始めた私たち二人の、新しい日常のカタチだった。
——けれど。
幸せな余韻の中で目を閉じると、まだ何も知らない『彼』の顔が、胸の奥で静かに揺れていた——。
