ついに約束の週末がやってきた。
5月も半ばを過ぎ、夕方からの風が心地よく感じられる季節。今日は柊と初めて二人で食事に行く日だ。
「せっかくだし、柚那の地元まで車で迎えに行くよ」
そう言ってくれた彼の言葉に甘え、私は地元の駅周辺で合流する約束をしていた。
待ち合わせ時間が近づき、少しそわそわしながら連絡を待っていると、柊から電話が入った。
『柚那ちゃん、ほんとにごめん! ナビの調子が悪くて、駅の反対側のバイパスに案内されちゃって……。今、サンライフっていう大きなスーパーの駐車場に車停めたんだけど、そこから駅に向かう道が事故で大渋滞してて、全然車が動かないんだ』
スピーカー越しに聞こえてくる彼の声は、心底焦っているようだった。
『マジでごめん……。どれくらいかかるか分からないけど、絶対行くから駅で待っててくれる?』
電話の向こうで申し訳なさそうにしている彼の姿が目に浮かび、私は迷わず口を開いた。
「ううん、大丈夫。私、そこまで歩いていくよ!」
『えっ!? 嘘、歩ける距離じゃないでしょ! だめだよ、待ってて!』
「ううん、歩いたほうが絶対早いから。昼間の暑さもやわらいで涼しくなってきたし、全然気にしないで!」
これ以上、彼に気を揉ませたくない。その一心だった。
『……ごめん、じゃあ気をつけてきてね。本当にごめん』
電話を切り、私はサンライフに向けて歩き出した。
(少し距離はあるけど、まあいっか)
最初はそんな軽い気持ちだった。
けれど、車ならすぐの距離でも、徒歩だと景色がなかなか変わらない。少しヒールのある靴を履いてきてしまったことを後悔しながら、見慣れた地元の道をひたすら歩き続けた。
オレンジ色に染まっていた夕空が、歩を進めるごとにゆっくりと群青色へと溶けていく。街灯がひとつ、またひとつと点灯し始め、周囲はすっかり暗くなっていった。
足の先がじんじんと痛み始め、スマホの地図で位置を確認しながら黙々と歩く。
(もう少し……あと少し……)
ようやく目的のスーパーの看板が見えた頃には、完全に夜の闇が街を包み込んでいた。歩き始めてから、ちょうど一時間が経っていた。
広い駐車場の奥、ハザードランプを小さく点滅させている一台の乗用車が目に入った。
近づいていくと、フロントガラスの向こうで運転席の柊が私に気づき、慌てた様子で外へ飛び出してきた。
「柚那ちゃん!!」
彼は駆け寄ってくるなり、私に向かって深く頭を下げた。
「ほんとにごめん!!!! ナビが調子悪くて迷った上に、こんなに歩かせちゃって……すっかり暗くなっちゃったよね。一時間もかかったでしょ!? 足、痛くない? 本当にごめん!」
暗闇の中でもわかるくらい、本気で焦った顔で何度も頭を下げる彼。
足はくたくたに疲れていたけれど、1時間も歩かされたことへの不満は不思議と消えていた。
私のためにこんなにも必死になって恐縮している彼の姿を見ていたら、歩き疲れた足の痛みもすっと和らいでいくような気がした。
「大丈夫だよ。無事に合流できてよかった」
「うわー、マジで最悪だ俺……初めて二人で出かけるのに。今日の埋め合わせは絶対するから!」
申し訳なさそうに眉を下げる彼の顔を見つめながら、私は小さく微笑んだ。
5月も半ばを過ぎ、夕方からの風が心地よく感じられる季節。今日は柊と初めて二人で食事に行く日だ。
「せっかくだし、柚那の地元まで車で迎えに行くよ」
そう言ってくれた彼の言葉に甘え、私は地元の駅周辺で合流する約束をしていた。
待ち合わせ時間が近づき、少しそわそわしながら連絡を待っていると、柊から電話が入った。
『柚那ちゃん、ほんとにごめん! ナビの調子が悪くて、駅の反対側のバイパスに案内されちゃって……。今、サンライフっていう大きなスーパーの駐車場に車停めたんだけど、そこから駅に向かう道が事故で大渋滞してて、全然車が動かないんだ』
スピーカー越しに聞こえてくる彼の声は、心底焦っているようだった。
『マジでごめん……。どれくらいかかるか分からないけど、絶対行くから駅で待っててくれる?』
電話の向こうで申し訳なさそうにしている彼の姿が目に浮かび、私は迷わず口を開いた。
「ううん、大丈夫。私、そこまで歩いていくよ!」
『えっ!? 嘘、歩ける距離じゃないでしょ! だめだよ、待ってて!』
「ううん、歩いたほうが絶対早いから。昼間の暑さもやわらいで涼しくなってきたし、全然気にしないで!」
これ以上、彼に気を揉ませたくない。その一心だった。
『……ごめん、じゃあ気をつけてきてね。本当にごめん』
電話を切り、私はサンライフに向けて歩き出した。
(少し距離はあるけど、まあいっか)
最初はそんな軽い気持ちだった。
けれど、車ならすぐの距離でも、徒歩だと景色がなかなか変わらない。少しヒールのある靴を履いてきてしまったことを後悔しながら、見慣れた地元の道をひたすら歩き続けた。
オレンジ色に染まっていた夕空が、歩を進めるごとにゆっくりと群青色へと溶けていく。街灯がひとつ、またひとつと点灯し始め、周囲はすっかり暗くなっていった。
足の先がじんじんと痛み始め、スマホの地図で位置を確認しながら黙々と歩く。
(もう少し……あと少し……)
ようやく目的のスーパーの看板が見えた頃には、完全に夜の闇が街を包み込んでいた。歩き始めてから、ちょうど一時間が経っていた。
広い駐車場の奥、ハザードランプを小さく点滅させている一台の乗用車が目に入った。
近づいていくと、フロントガラスの向こうで運転席の柊が私に気づき、慌てた様子で外へ飛び出してきた。
「柚那ちゃん!!」
彼は駆け寄ってくるなり、私に向かって深く頭を下げた。
「ほんとにごめん!!!! ナビが調子悪くて迷った上に、こんなに歩かせちゃって……すっかり暗くなっちゃったよね。一時間もかかったでしょ!? 足、痛くない? 本当にごめん!」
暗闇の中でもわかるくらい、本気で焦った顔で何度も頭を下げる彼。
足はくたくたに疲れていたけれど、1時間も歩かされたことへの不満は不思議と消えていた。
私のためにこんなにも必死になって恐縮している彼の姿を見ていたら、歩き疲れた足の痛みもすっと和らいでいくような気がした。
「大丈夫だよ。無事に合流できてよかった」
「うわー、マジで最悪だ俺……初めて二人で出かけるのに。今日の埋め合わせは絶対するから!」
申し訳なさそうに眉を下げる彼の顔を見つめながら、私は小さく微笑んだ。
