柊とLINEを交換してからは、毎日のようにメッセージのやり取りが続いた。
最初は、私の中に勝手な先入観があった。
いつもクラスの賑やかなグループの中心で笑っていて、服装や小物もおしゃれで目立つ彼。誰とでも物怖じせずに話せる姿を見て、私とは住む世界が違う男の子なんだと思い込んでいた。
けれど、画面越しに会話を重ねるにつれて、その印象は少しずつ変わっていった。
課題の多さに「もう無理ー」と愚痴をこぼし合ったり、好きな食べ物や休日の過ごし方を教え合ったり。
やり取りの途中で彼が送ってくるスタンプが、意外にも可愛い犬のキャラクターだったりして、彼が大らかで、とても話しやすい男の子なのだと知った。
そんなある日の夜、私はふと気になっていたことをメッセージに打ち込んだ。
『そういえば、なんで私にはSNSから連絡してきたの? 学校で直接聞けばよかったのに』
送信して数分後。画面が切り替わり、少し長めのメッセージが届いた。
『ごめん、気になってたよね。柚那ちゃん、学校だといつも優奈ちゃんと一緒にいるから、二人の邪魔をしたくなくてさ。それに、直接聞くのはちょっと緊張したんだよね』
画面の文字を追ううちに、胸の奥がふっと温かくなる。
(そうだったんだ……)
私に対する気遣いと、少し照れくさそうな本音。そんな優しい理由に、思わず口元が緩んだ。
さらに数日後、柊は自分から千恵ちゃんのことについても触れてきた。
『実は俺、ちょっと前に千恵ちゃんにLINE聞いたんだよね。最初は少し気になってて。でも、彼氏がいるからって断られちゃってさ』
突然の打ち明け話に驚いたけれど、自分の格好悪い失敗談をあっけらかんと話す彼の素直さに、不思議と嫌な感じはしなかった。
『変な噂になる前に、柚那ちゃんにはちゃんと自分の口から言っておきたくて』
そんな風に隠し事をせず、誠実に話してくれる柊の姿勢に、私の彼に対する信頼と好感は確実に深まっていた。
クラスの男友達として、とても居心地が良い存在。
そう思い始めていた矢先のことだった。
『もしよかったら、今度二人でご飯でも行かない?』
ポン、と画面に浮かび上がった柊からのストレートな誘い。
不意をつかれ、心臓がトクンと小さく跳ねる。
千恵ちゃんのときとは違う、まっすぐに私へ向けられた言葉。
けれど、返信を打とうとした私の指先は、ピタリと止まってしまった。
(二人で、ご飯……)
男の子と二人きりで出かける。
その事実を突きつけられた瞬間、ふいに胸の奥がチクリと痛んだ。
脳裏をかすめたのは、離れた場所で自分の歩幅で進んでいる、勇斗の優しい笑顔だった。
一番辛いときにいつも話を聞いてくれて、味方でいてくれたのは勇斗だった。連絡の頻度は減ってしまったけれど、私の心の中には、今も勇斗の存在が大きく占めている。
……けれど、いつまでも連絡を躊躇して、一人で立ち止まってちゃダメだ。
私は新生活をスタートさせたんだから。
私は小さく深呼吸をして、自分に言い聞かせるように返信を打ち込んだ。
『……うん。行こう』
少しの戸惑いと、胸の奥に残るチリッとした痛みを隠しながら、私は新しい一歩を踏み出すように送信ボタンを押した。
最初は、私の中に勝手な先入観があった。
いつもクラスの賑やかなグループの中心で笑っていて、服装や小物もおしゃれで目立つ彼。誰とでも物怖じせずに話せる姿を見て、私とは住む世界が違う男の子なんだと思い込んでいた。
けれど、画面越しに会話を重ねるにつれて、その印象は少しずつ変わっていった。
課題の多さに「もう無理ー」と愚痴をこぼし合ったり、好きな食べ物や休日の過ごし方を教え合ったり。
やり取りの途中で彼が送ってくるスタンプが、意外にも可愛い犬のキャラクターだったりして、彼が大らかで、とても話しやすい男の子なのだと知った。
そんなある日の夜、私はふと気になっていたことをメッセージに打ち込んだ。
『そういえば、なんで私にはSNSから連絡してきたの? 学校で直接聞けばよかったのに』
送信して数分後。画面が切り替わり、少し長めのメッセージが届いた。
『ごめん、気になってたよね。柚那ちゃん、学校だといつも優奈ちゃんと一緒にいるから、二人の邪魔をしたくなくてさ。それに、直接聞くのはちょっと緊張したんだよね』
画面の文字を追ううちに、胸の奥がふっと温かくなる。
(そうだったんだ……)
私に対する気遣いと、少し照れくさそうな本音。そんな優しい理由に、思わず口元が緩んだ。
さらに数日後、柊は自分から千恵ちゃんのことについても触れてきた。
『実は俺、ちょっと前に千恵ちゃんにLINE聞いたんだよね。最初は少し気になってて。でも、彼氏がいるからって断られちゃってさ』
突然の打ち明け話に驚いたけれど、自分の格好悪い失敗談をあっけらかんと話す彼の素直さに、不思議と嫌な感じはしなかった。
『変な噂になる前に、柚那ちゃんにはちゃんと自分の口から言っておきたくて』
そんな風に隠し事をせず、誠実に話してくれる柊の姿勢に、私の彼に対する信頼と好感は確実に深まっていた。
クラスの男友達として、とても居心地が良い存在。
そう思い始めていた矢先のことだった。
『もしよかったら、今度二人でご飯でも行かない?』
ポン、と画面に浮かび上がった柊からのストレートな誘い。
不意をつかれ、心臓がトクンと小さく跳ねる。
千恵ちゃんのときとは違う、まっすぐに私へ向けられた言葉。
けれど、返信を打とうとした私の指先は、ピタリと止まってしまった。
(二人で、ご飯……)
男の子と二人きりで出かける。
その事実を突きつけられた瞬間、ふいに胸の奥がチクリと痛んだ。
脳裏をかすめたのは、離れた場所で自分の歩幅で進んでいる、勇斗の優しい笑顔だった。
一番辛いときにいつも話を聞いてくれて、味方でいてくれたのは勇斗だった。連絡の頻度は減ってしまったけれど、私の心の中には、今も勇斗の存在が大きく占めている。
……けれど、いつまでも連絡を躊躇して、一人で立ち止まってちゃダメだ。
私は新生活をスタートさせたんだから。
私は小さく深呼吸をして、自分に言い聞かせるように返信を打ち込んだ。
『……うん。行こう』
少しの戸惑いと、胸の奥に残るチリッとした痛みを隠しながら、私は新しい一歩を踏み出すように送信ボタンを押した。
