君の隣。 〜一番愛した人の裏切り、泥沼のモラハラ彼氏。傷だらけの私を最後に救ったのは、出会って10年、ずっと私だけを思い続けてくれた「親友の元彼」でした〜

柊とLINEを交換してからは、毎日のようにメッセージのやり取りが続いた。

最初は、私の中に勝手な先入観があった。
いつもクラスの賑やかなグループの中心で笑っていて、服装や小物もおしゃれで目立つ彼。誰とでも物怖じせずに話せる姿を見て、私とは住む世界が違う男の子なんだと思い込んでいた。

けれど、画面越しに会話を重ねるにつれて、その印象は少しずつ変わっていった。

課題の多さに「もう無理ー」と愚痴をこぼし合ったり、好きな食べ物や休日の過ごし方を教え合ったり。
やり取りの途中で彼が送ってくるスタンプが、意外にも可愛い犬のキャラクターだったりして、彼が大らかで、とても話しやすい男の子なのだと知った。

そんなある日の夜、私はふと気になっていたことをメッセージに打ち込んだ。

『そういえば、なんで私にはSNSから連絡してきたの? 学校で直接聞けばよかったのに』

送信して数分後。画面が切り替わり、少し長めのメッセージが届いた。

『ごめん、気になってたよね。柚那ちゃん、学校だといつも優奈ちゃんと一緒にいるから、二人の邪魔をしたくなくてさ。それに、直接聞くのはちょっと緊張したんだよね』

画面の文字を追ううちに、胸の奥がふっと温かくなる。

(そうだったんだ……)

私に対する気遣いと、少し照れくさそうな本音。そんな優しい理由に、思わず口元が緩んだ。

さらに数日後、柊は自分から千恵ちゃんのことについても触れてきた。

『実は俺、ちょっと前に千恵ちゃんにLINE聞いたんだよね。最初は少し気になってて。でも、彼氏がいるからって断られちゃってさ』

突然の打ち明け話に驚いたけれど、自分の格好悪い失敗談をあっけらかんと話す彼の素直さに、不思議と嫌な感じはしなかった。

『変な噂になる前に、柚那ちゃんにはちゃんと自分の口から言っておきたくて』

そんな風に隠し事をせず、誠実に話してくれる柊の姿勢に、私の彼に対する信頼と好感は確実に深まっていた。

クラスの男友達として、とても居心地が良い存在。
そう思い始めていた矢先のことだった。

『もしよかったら、今度二人でご飯でも行かない?』

ポン、と画面に浮かび上がった柊からのストレートな誘い。

不意をつかれ、心臓がトクンと小さく跳ねる。
千恵ちゃんのときとは違う、まっすぐに私へ向けられた言葉。

けれど、返信を打とうとした私の指先は、ピタリと止まってしまった。

(二人で、ご飯……)

男の子と二人きりで出かける。
その事実を突きつけられた瞬間、ふいに胸の奥がチクリと痛んだ。

脳裏をかすめたのは、離れた場所で自分の歩幅で進んでいる、勇斗の優しい笑顔だった。

一番辛いときにいつも話を聞いてくれて、味方でいてくれたのは勇斗だった。連絡の頻度は減ってしまったけれど、私の心の中には、今も勇斗の存在が大きく占めている。

……けれど、いつまでも連絡を躊躇して、一人で立ち止まってちゃダメだ。
私は新生活をスタートさせたんだから。

私は小さく深呼吸をして、自分に言い聞かせるように返信を打ち込んだ。

『……うん。行こう』

少しの戸惑いと、胸の奥に残るチリッとした痛みを隠しながら、私は新しい一歩を踏み出すように送信ボタンを押した。