45話に災害に関する記述がございます。
7月28日に起こった九州の震災を意図したものではございません。トラウマなどをお持ちの方は閲覧に関して何卒ご注意ください。
該当地域の皆様は、どうぞ安全第一にお過ごしください。
また、今回被害に遭われた皆様には謹んでお見舞い申し上げます。
*****
「んんん……」
「シャーリー様!」
「シャーリー様、目を覚まされたのですね! よかった……! すぐにジルグロッセ様にお知らせを!」
「は、はい」
侍女の人たちの声が飛び交う。
今何時だろう? カーテンが閉まっている。
あ、違う。
このベッド、天蓋だ。
まだ慣れない、豪勢なキングサイズのベッド。
私、どうしたんだっけ?
「シャーリー様、お加減はいかがですか?」
「ルシカさん……私、どうしたんでしたっけ……? あれ? 起き上がれない? なんで?」
「神力を大量にお使いになったからだと思われます。覚えておられますか? 七日前に帝都国民への婚約発表と、聖女としてのお披露目が行われたのを」
「七日前!?」
「はい。覚えておられないのですね。昨日と一昨日、少しだけ目を覚まされてお食事はされていたのですが……やはり意識はなかったのですね」
「え? え? ……全然、覚えていなかったです……」
頭を抱えようとして、体が動かないことにまた愕然とした。
そうだった、私、婚約発表と……聖女としてのお披露目を行なって……。
「でも七日も寝ていたなんて……。あのあとどうなったんですか? ジルグロッセ様は――」
「申し訳ありません。ジルグロッセ様は……」
ルシカさんが俯く。
え? な、なに? ジルグロッセ様に、なにかあったの?
「ジルグロッセ様になにかっ――」
「ギャランゼ砦の方に行っております。おそらく二ヶ月は戻られないでしょう。とても苦々しい表情で、できる限り早く戻るつもり、とはおっしゃっておりましたけれど。本当に、起きるまで待っておられたかったようですが。申し訳ありません。ですが、早馬は出しましたので」
「え? え? あ、いいえ。お仕事ですものね、仕方ないですよね」
「いえ、そうなのですが、そうではなくて」
「はい?」
なんだろう? 不思議な言い淀み方。
瞬きをすると、「お忘れですか?」と聞かれる。
な、なにが? 私まだなにか忘れている?
「オーディール神教国に神々の裁きが下ったのです。 被害が大きく、南部の大陸の一部が……その……切り取られたかのように……なくなってしまって」
「っ!?」
ほぼすべての神々が参加した“裁き”。
相当の被害になるとは思っていたけれど、大陸の南部が消えた!?
絶句していると、ルシカさんも肩を落として悲しそうにする。
「ですので、おそらく数ヶ月は戻ることが困難であると。申し訳ございません」
「い……いいえ」
「アルヴァーニュ様はきっとシャーリー様に大陸の南部がなくなった日に、起きていない方がいいと思われたのかもしれませんね。シャーリー様の心の負担にさせないために。……まだ起きて食事ができなさそうでしたら、流動食をお持ちします。食べられそうですか?」
即答ができない。
私、ショックを受けている。
そうか、こんなふうになるんだ。
私が『予言』を読んだから。
私のせいじゃないと思うし、宗教における洗脳の重篤さを思えば仕方ないとわかる。
そう、頭では完璧にわかっている。
読み上げた時も他人事だったのに……。
「ジルグロッセ様は……現地にいらっしゃるんですね」
「はい。後処理を務めておられます。まさか陸ごとなくなってしまうとは思わず、想定よりは早く帰れるだろうと陛下はおっしゃっておられましたが……やはり整備にはかなり時間がかかると思われますので」
「そうですよね……」
あの方が、そんな惨状を目の当たりにしているのかと思うと胸がとてつもなく痛い。
あの疲弊し切って、絶望した目を思い出す。
優しいジルグロッセ様がそんな惨状を目の前に、復興のお仕事をなさっていると思うともっと苦しくなる。
また新たな傷が刻まれてしまったのではないだろうか。
ジルグロッセ様、おつらいだろう。
もう人が亡くなるところを見るのは嫌だったはず。
「それでも、シャーリー様が目を覚まされたので一時的にお戻りになられるかもしれません。偽ロドリゲスの処刑もございますし」
「処刑、が、決まったのですか」
「はい。ですが、もっと情報を引き出してからということになっております。おそらく魔法で」
「それって――」
「そうですね。精神干渉系の魔法は後遺症が起こりやすいですが、処刑が決まっておりますので。……それにしても、取り巻きとして捕えられた者たちも愚かですね。あれほど狂信しておきながら、偽者と気づかずに命懸けで守ってともに捕えられ処刑されるのですから。やはり詐欺は誰も幸せにしないのです」
「……そうね」
仕方ない。
全部当たり前。
私はもっと気をしっかり持たなければ。
ぼんやりと天蓋を見上げて、改めて体を起こそうとして……失敗する。
ほ、本当にまったく動かない! なんでー!
「あの、神力を使うと聖人聖女は体が動かなくなるとジルグロッセ様が言っておりましたけれども……」
「はい。そのようです。だいたい翌日には起きて歩き回れるそうです。ですが、今回シャーリー様が使われた神力は、神を顕現させるほどのものでした。七日も目覚めなかったのはその反動でしょう」
「そ、そんなすごいことしてしまったんですね」
気合いを入れすぎたか。
後悔はしてないけれど。
だって、あれでジルグロッセ様が戦争から解放されると思ったから……。
「ともかく目が覚めたのです。すぐに起き上がれるようになるでしょう。焦ることはございません」
「そ、そうはいかないです。私、早く起きて歩けるようになりたいんです」
「なぜですか?」
「ジルグロッセ様に、会いに行くためにです!」
7月28日に起こった九州の震災を意図したものではございません。トラウマなどをお持ちの方は閲覧に関して何卒ご注意ください。
該当地域の皆様は、どうぞ安全第一にお過ごしください。
また、今回被害に遭われた皆様には謹んでお見舞い申し上げます。
*****
「んんん……」
「シャーリー様!」
「シャーリー様、目を覚まされたのですね! よかった……! すぐにジルグロッセ様にお知らせを!」
「は、はい」
侍女の人たちの声が飛び交う。
今何時だろう? カーテンが閉まっている。
あ、違う。
このベッド、天蓋だ。
まだ慣れない、豪勢なキングサイズのベッド。
私、どうしたんだっけ?
「シャーリー様、お加減はいかがですか?」
「ルシカさん……私、どうしたんでしたっけ……? あれ? 起き上がれない? なんで?」
「神力を大量にお使いになったからだと思われます。覚えておられますか? 七日前に帝都国民への婚約発表と、聖女としてのお披露目が行われたのを」
「七日前!?」
「はい。覚えておられないのですね。昨日と一昨日、少しだけ目を覚まされてお食事はされていたのですが……やはり意識はなかったのですね」
「え? え? ……全然、覚えていなかったです……」
頭を抱えようとして、体が動かないことにまた愕然とした。
そうだった、私、婚約発表と……聖女としてのお披露目を行なって……。
「でも七日も寝ていたなんて……。あのあとどうなったんですか? ジルグロッセ様は――」
「申し訳ありません。ジルグロッセ様は……」
ルシカさんが俯く。
え? な、なに? ジルグロッセ様に、なにかあったの?
「ジルグロッセ様になにかっ――」
「ギャランゼ砦の方に行っております。おそらく二ヶ月は戻られないでしょう。とても苦々しい表情で、できる限り早く戻るつもり、とはおっしゃっておりましたけれど。本当に、起きるまで待っておられたかったようですが。申し訳ありません。ですが、早馬は出しましたので」
「え? え? あ、いいえ。お仕事ですものね、仕方ないですよね」
「いえ、そうなのですが、そうではなくて」
「はい?」
なんだろう? 不思議な言い淀み方。
瞬きをすると、「お忘れですか?」と聞かれる。
な、なにが? 私まだなにか忘れている?
「オーディール神教国に神々の裁きが下ったのです。 被害が大きく、南部の大陸の一部が……その……切り取られたかのように……なくなってしまって」
「っ!?」
ほぼすべての神々が参加した“裁き”。
相当の被害になるとは思っていたけれど、大陸の南部が消えた!?
絶句していると、ルシカさんも肩を落として悲しそうにする。
「ですので、おそらく数ヶ月は戻ることが困難であると。申し訳ございません」
「い……いいえ」
「アルヴァーニュ様はきっとシャーリー様に大陸の南部がなくなった日に、起きていない方がいいと思われたのかもしれませんね。シャーリー様の心の負担にさせないために。……まだ起きて食事ができなさそうでしたら、流動食をお持ちします。食べられそうですか?」
即答ができない。
私、ショックを受けている。
そうか、こんなふうになるんだ。
私が『予言』を読んだから。
私のせいじゃないと思うし、宗教における洗脳の重篤さを思えば仕方ないとわかる。
そう、頭では完璧にわかっている。
読み上げた時も他人事だったのに……。
「ジルグロッセ様は……現地にいらっしゃるんですね」
「はい。後処理を務めておられます。まさか陸ごとなくなってしまうとは思わず、想定よりは早く帰れるだろうと陛下はおっしゃっておられましたが……やはり整備にはかなり時間がかかると思われますので」
「そうですよね……」
あの方が、そんな惨状を目の当たりにしているのかと思うと胸がとてつもなく痛い。
あの疲弊し切って、絶望した目を思い出す。
優しいジルグロッセ様がそんな惨状を目の前に、復興のお仕事をなさっていると思うともっと苦しくなる。
また新たな傷が刻まれてしまったのではないだろうか。
ジルグロッセ様、おつらいだろう。
もう人が亡くなるところを見るのは嫌だったはず。
「それでも、シャーリー様が目を覚まされたので一時的にお戻りになられるかもしれません。偽ロドリゲスの処刑もございますし」
「処刑、が、決まったのですか」
「はい。ですが、もっと情報を引き出してからということになっております。おそらく魔法で」
「それって――」
「そうですね。精神干渉系の魔法は後遺症が起こりやすいですが、処刑が決まっておりますので。……それにしても、取り巻きとして捕えられた者たちも愚かですね。あれほど狂信しておきながら、偽者と気づかずに命懸けで守ってともに捕えられ処刑されるのですから。やはり詐欺は誰も幸せにしないのです」
「……そうね」
仕方ない。
全部当たり前。
私はもっと気をしっかり持たなければ。
ぼんやりと天蓋を見上げて、改めて体を起こそうとして……失敗する。
ほ、本当にまったく動かない! なんでー!
「あの、神力を使うと聖人聖女は体が動かなくなるとジルグロッセ様が言っておりましたけれども……」
「はい。そのようです。だいたい翌日には起きて歩き回れるそうです。ですが、今回シャーリー様が使われた神力は、神を顕現させるほどのものでした。七日も目覚めなかったのはその反動でしょう」
「そ、そんなすごいことしてしまったんですね」
気合いを入れすぎたか。
後悔はしてないけれど。
だって、あれでジルグロッセ様が戦争から解放されると思ったから……。
「ともかく目が覚めたのです。すぐに起き上がれるようになるでしょう。焦ることはございません」
「そ、そうはいかないです。私、早く起きて歩けるようになりたいんです」
「なぜですか?」
「ジルグロッセ様に、会いに行くためにです!」



