あの時間を忘れる方法が あるなら

真っ直ぐ私を見つめる瞳は逸らされる事もなく、まるで逃がさないとでも言うように私の心に噛み付いてくる

あなたのことを一日も早く忘れたいと逃げて来た。

この気持ちに気付いてからも契約が終わる日まででも側にいられれば他には何もいらないというほど愛しかった

そんな私の気持ちなどきっと柊さんに伝えられる日なんて来ないのに、それでも側に居ろというの?

「私なんて雇って後悔しても知りませんよ‥
お転婆なところがありますから」

あの時間を忘れる為にもう一度彼と向き合うべきならそれも一つの方法なのかもしれない

逃げても逃げても忘れられないなら、あの時間を忘れられるほどの充実した時間を過ごせばいつかは消え去ってくれる?

思い出すだけで泣いてしまいそうな気持ちを押し殺して柊さんを見つめると、フッと口元を緩めて笑った気がした

『‥‥後悔などしない。‥君の本当の姿が見たいから構わない。』

ドクン


その言葉に何故か長浜 莉奈としてではなく、今度は嘘偽りのない私としてもう一度そばで生きてみろと言われた気がする

離れていて毎日考えてしまうくらいツラいなら、いっそ幸せな2人を嫌というほど側にいて見ていれば諦めもつくだろう‥‥

説明会に来ただけなのに、まさかその日のうちに雇用契約書にサインをするなんて思わなかったし、自分の行動にさえ自分が驚いているくらいなのだ

子供のようにムキになってなかったかと落ち込みながらも帰る前に辰哉君のお店に顔を出すことにした