あの時間を忘れる方法が あるなら

『はい、じゃあここに座って下さいね。』

「えっ!?あ‥あの私は」

他のブースと違ってカーテンで仕切られたそこには椅子は一つしかなく、後ろから出て行った八雲さんに気を取られているとそこから入って来た柊さんに驚く

どうしよう‥‥何で説明会に社長が直々に来るの?

半分嵌められたような感じに八雲さんを思い切り責めたくもなったが、こうなってしまったら逃げられず仕方なく柊さんが似合わないパイプ椅子に座るのを待った

『初めまして。川崎不動産の川崎 柊です。
本日は足を運んでくださりありがとうございます。どのような職種を希望か教えて頂けますか?』

‥‥えっ?

どう接してくるのか構えていたのに、思っても見ない話し方や態度に俯いていた顔を上げる

同じ顔をした別人じゃない‥よね?

名前だって名乗ったし、こんな容姿が整った人は他には知らない‥‥

「ッ‥あ‥‥私は‥」

『フッ‥‥緊張しなくてもいいから話だけでも聞かせてくれませんか?』

どういうつもりなのだろう‥‥

お祭りで会った時は確かに私の事をハッキリと覚えていたのに、なぜ今になって他人のフリをしてくるの?

ううん‥‥そういう契約だからきっと柊さんも思い出してくれたのだろう

もう私達の間には今までと同じで何もなかった関係にしてくれているのだと‥‥

「仕事を探しに来ました‥ただ私は高卒なのでこちらの企業様では難しいとは思います。せっかく案内していただきましたがお役には立てませんし私に裂くお時間も無駄になると思います。他の方に早く譲りたいので失礼します。」

柊さんが私に向き合ってくれるのならと、私も丁寧に目を見てそう伝えると椅子を引いて立ち上がった