あの時間を忘れる方法が あるなら

たった10日も離れていないのに、今こうして腕の中にいる彼女がここにいる事がまだ夢のようだ‥‥そう思うだけで自分の胸が締め付けられていく

俺から離れようと必死で抵抗する姿も、こんな時でさえ契約書に沿って他人のフリをしようとする彼女の真面目な優しさに、もう一度腕の中に閉じ込めて離したくないとさえ思えた

彼女の気持ちを尊重するべきだと手放し階段を降りると、海辺で結愛のそばに居た男性に抱えられ自転車に乗せられた結愛と目が合った

やっぱり自分の気持ちに嘘はつけない‥‥

結愛が俺と他人としていたいならそれでもいい

もう一度始めからやり直せばいいだけなのだからと‥‥

スマホを取り出し、八雲にすぐ電話をかけると歩きながら莉奈の待つ海辺を目指した

『社長』

『八雲。◯◯市の空き物件の一覧を送ってくれ。あとは空き地や土地の詳細もだ。』

『は、はい、かしこまりました。明日までに整理して送ります』

ちょうど電話を切るところを見ていた莉奈が駆け寄ると腕を絡めてきたその手をスッと戻すと莉奈が眉を寄せたが気にしなかった

『走ってきて暑いからすまない。後でかき氷でも食べよう』

『ええ‥分かったわ』

打ち上げられる花火を見上げながら、先は触れた結愛の事を思い出し掌を握りしめる

もう一度君のことがちゃんと知りたい‥‥
だからそばにいる事を許して欲しい‥‥

柊 side end