あの時間を忘れる方法が あるなら

柊 side

結愛が俺の元を去ってから魂が抜けたように仕事に身が入らなかったが、莉奈の回復が思ったよりも早いことが唯一救われた

『柊さん、週末は連れてって欲しい場所があるの。』

『何処だ?』

『私の故郷。そこでお祭りがあるから、おばあちゃんのお見舞いのついでに行きたいなって』

莉奈の故郷‥‥

正直、攫われて監禁された場所だからあまりいい思い出はないけれど、莉奈と出会って救われた場所でもある

思い出すのは莉奈のはずなのに、頭の大半を結愛が占めていて、目の前の彼女を見れば見るほど結愛と似ていないと思い知らされていた

いくら容姿が似ていても、母さんにバレるのは時間の問題かもしれない‥‥

母さんが認めたのは、直向きで裏表のない自然体の結愛なのだから‥‥

『ああ‥気分転換に行こう。ただ、君はまだ目覚めたばかりだから無理だけはしないと約束してくれ。』

『わぁ!柊さんありがとう!!その時着ていく服や浴衣も行く前に欲しいの。』

『ん‥分かった。買い物に連れてくよ』

手を握った時に顔を真っ赤にして恥じらう彼女は自分の名前を読んで欲しい‥‥ただそれだけしかこの数ヶ月の間でお願いして来なかった

佐々木 結愛に会うまでは莉奈のわがままも受け入れられていたのに、彼女が当たり前に向けてくる欲に居心地の悪さを覚える

あの時助けてくれたあの女の子は見返りなど求めず俺のことを考えて逃がしてくれた‥‥

今の莉奈は結愛のように様々なことに立ち向かえるだろうか‥