あの時間を忘れる方法が あるなら

『元気そうで安心した。さよならも言えないままだったから君の事を毎日考えていた。』

「契約上の関係にそんなの必要ないです‥。こんなところに居ず、早く莉奈さんの元へ戻られて下さい。私も家に帰りますので。」

手を強く振り払って頭を下げると背を向けた途端に手首をまた掴まれた

『家って‥‥君は今‥ここに住んでるのか?』

「川崎さんには関係ありません。失礼します」

もう一度手を振り解くと、足の痛みに耐えながら何とか神社の階段を駆け降りた。

柊さんごめんなさい‥‥

あんな態度を取りたくないし、手だって振り払いたくなかった‥‥あのまま繋いでいられたらどんなに幸せか‥‥

今になって我慢していた涙が溢れ出すと、階段を降りたところにいた辰哉君に思いっきりオデコをデコピンされた

『お前!急に帰るって何なんだよ‥‥心配するだろ!!って‥‥おい‥泣いてんのか?』

「グスッ‥‥足が痛い‥」

『それなら早く言えよ‥ほら抱っこするから掴まれ。』

えっ!?

有無を言わさず軽々とお姫様抱っこをされてしまうと少し離れた場所に停めてあった自転車の後ろにそっと降ろしてくれた。

『足が痛くて泣くなんてやっぱりまだ子供だな。さ、帰るぞ。』

自転車を漕ぐ辰哉君の腰に掴まると、こちらを見る柊さんと目が合ったがそのまま目を逸らして振り返ることはしなかった

ただ‥少しでも遠くに早く行ってと瞳を閉じて辰哉君に気付かれないようにまた涙を流した