あの時間を忘れる方法が あるなら

まだ柊さんの元を離れて1週間

お祭りに来れるくらい回復した莉奈さんの元気そうな姿を見て、いま隣にいるのが自分ではない事が当然なのに悲しいのだ

でも‥どうしてこんな遠い街に柊さんがいるの?

こんな所で会うな私思いもしなかっただけに、近くの神社に投げ込むと大きな杉の木の影に身を隠し息を整えていく

どうしよう‥‥辰哉君にもものすごく悪い事をしてしまった‥‥明日謝りに行かないと‥

少し落ち着いてから歩いて帰ろうとしたら、履き慣れない下駄で走った時に足を擦りむいていただろう傷の痛みにとられ石畳につまづいてしまい目を瞑った後、痛みではなく既に恋しいと思えていた香りに包まれる


『フッ‥‥本当にお転婆なんだな』

ドクン

浴衣越しに伝わる腕の強さや掌の温度に目頭が熱くなると共に、接触してはいけない人なのにと両手で思い切り柊さんの胸を押すと、震える私の両手を大きな手が優しく包み込んだ

『心配しなくていい。君のことを知ってるのは八雲と莉奈だけだから逃げる必要がない。だから君の顔をちゃんと見せてくれないか?』

「ッ‥」

黙って消えた事も咎めることもせず、いつもと変わらない優しい声色に胸が張り裂けそうだ‥

髪型も髪色も変えた。メイクだって莉奈さんを真似ていた時と全然違う‥それなのにあんな一瞬目が合っただけで私と分かったの?

心音がどうしようもなく煩く頭にまで響く中、ゆっくりと顔を上げると柊さんが私を見て笑ってくれた