あの時間を忘れる方法が あるなら

河原まで自転車で5分

昔から変わらない賑わいを見せる光景が懐かしくて、その場に立ち止まり色々な屋台に目を輝かせる

ここの河原の先の海辺でいつも花火が上がってて、みんなゆっくりここを堪能してからそこへ向かうのだ

『はぐれないように側に居ろよ?』

「ふふ‥もう私24歳だよ?本当に昔から達也君は面倒見がいいよね。」

『まぁな‥まぁ‥‥それだけじゃねえけど。
知ってる奴が声かけてくるかもだけど気にするな。』

何か言ったような気がしたけどニカっと笑う笑顔に安心すると2人で射的をしたり、金魚掬いを笑いながら楽しみ、この時間だけは柊さんの事をあまり考えずに済んだ

辰哉君は地元と言うこともあり、私と居ることで揶揄われたりもしていたが、地域の人たちとも仲が良く慕われているのがとても伝わった

『そろそろ花火だな。疲れただろ?』

「ううん‥楽しいが勝ってるから大丈夫。こんなにはしゃいだのいつぶりかなって‥‥」

差し出されたたこ焼きを食べようとすると、辰哉君の指が私の頬を掠めて髪の毛を耳にかけてくれた

『髪にソースが付くだろ?』

「うん‥ありがと‥‥‥ッ!!」

お礼を言おうと顔を上げると、辰哉君の向こうに居た2人に心臓が大きくハネ、たこ焼きをその場に落としてしまった

暗くても‥絶対見間違えるはずがない‥‥

並外れた容姿に彫刻のように整った顔立ちは、数ヶ月ずっとそばで見てきた人だから‥‥

『オイッ!どうかしたのか!?』

「ご‥ごめん‥‥私帰らなきゃ‥」

震える私を心配していれ辰哉君の声が頭に入って来ない‥‥

契約書に書かれていた事項に、この契約が終わる時にはお互い他人に戻ると

知らないフリをしないといけないのに、まだ心の整理も全くできていない私にはそれを隠し通す事が出来ない‥‥

隣に立つ莉奈さんとの姿を待ち望んでいたはずなのに、胸が苦しくてたまらない‥‥

『何言って‥おい!結愛!!』

両肩を揺さぶられ顔を覗き込む辰哉君を見上げると、こちらを見る柊さんと目が合い背を向けて勢いよく走った