あの時間を忘れる方法が あるなら

その足でそのまま電車に乗り10年ぶりに降り立った街は、幼い頃よりそれなりにお店やビルなども増えてはいるけれど、山々に囲まれ南は海に面している為、避暑地として別荘を建てる人もいるほど静かでいい場所だ

散歩をしながらも記憶に残る懐かしい場所に浸りながら歩いて行くと、一件の家の側で立ち止まる

‥‥ここであの男の子と話したのが最後だったんだよね‥‥

あの後上手く逃げて今も元気に暮らしているといいな‥‥あの子はこの辺りに住んでいた子なのか誰か知ってるかもしれない‥‥

当時、山から落ちた2人は傷だらけで、あの子が何から逃げてたのかも分かっていないのに、助けてあげなきゃという気持ちで必死だった。

名前くらい聞いておけば少しは手掛かりになった。それに私の名前も伝えれば良かった‥


「おばあちゃん!!」

『結愛ちゃん!!よく来たねぇ‥おばあちゃん、いつも結愛ちゃんが元気か心配してたけど、こんなに綺麗になって‥‥』

昔と殆ど変わらないおばあちゃんは少し痩せてしまったものの私を見ると目に涙を浮かべ背中を何度も撫でてくれた

「おばあちゃん、暫くここに居てもいい?お手伝いもするし何かやって欲しいことがあったら何でも言ってね?」

『結愛ちゃんに会えただけで充分だよ。人生長いんだからゆっくりして行きなさい。』

おばあちゃん‥‥

本当は逃げて来たなんて知られたら絶対悲しませてしまうはずだから余計な事は言わずにおこうと思えた