あの時間を忘れる方法が あるなら

ガチャ

『ただいま』

はやる気持ちを抑え帰宅すると、日が長い季節ではあるものの部屋の電気も付いていなかったことに違和感を覚えたが、玄関先に彼女の靴がないことに気付きリビングへ急いだ

『佐々木さん?』

電気を付けても誰もおらず、彼女の部屋を覗いても誰も居なかった為、スマホで彼女に電話をかけるとリビングから聞こえた着信音がする方へ向かうと、テーブルの上にに置かれた物に固まった

俺が買って渡したスマホ‥‥それに渡してあったクレジットカードやここの部屋の鍵

それらの横に1枚の小さなメモを見つけて手に取ると、そこに書かれていた一言に口元を手で押さえる

『結愛!!』

もう一度彼女の部屋に行き閉じられたクローゼットを開けると、そこにはここで探す為に買った洋服などが全て残っており、初めてのパーティーで彼女が着ていたドレスにそっと手を触れさせた

彼女も俺と同じ気持ちだなんて自惚れていたのか?

お世話になりましたなんて一言でこの関係をあっさりと終わらせれるほど本当にお金だけの為にあんなに頑張っていたとは思えない‥‥

どんな時でも周りを心配して、優しい笑顔で帰りを迎えてくれた彼女が今でもすぐ目に浮かぶ

『ッ‥‥』

人生で泣いたことなんて数えるほどしかないのに、勝手に涙が出たのは初めてだ‥‥

結愛‥‥

沢山ツラい思いをさせてすまない‥‥。
契約でも他人の名前で呼ばれても嫌な顔せずに過ごしてたけど、言えなかっただけで辛かったはずだ‥‥

結愛にまだちゃんと謝れてない‥‥
それに、こんな事を招いたのは俺の責任だ‥
許してくれなくてもいい‥でももう一度君と最初からやり直したい‥‥



柊 side end