あの時間を忘れる方法が あるなら

柊 side

『社長、今日は一段と集中されてますね?長浜さんが居ないからでしょうか?』

『八雲‥‥暇なら仕事を与えようか?』

『えっ!?い、忙しいですから!!珈琲をこちらに置いておきますね。』

佐々木さんがここに来てからというもの、八雲が俺をイジる事が増えたな‥‥

慌てて社長室を出ていく後ろ姿に口角を上げて笑うと、用意された珈琲を一口口に含んだ

『フッ‥‥ブラックか‥』

そういえば佐々木さんは何故いつも珈琲にミルクと少量の砂糖を入れてくれてたのだろう‥‥

甘党なんて話した事もないけど、家でミルクに蜂蜜やブランデーを落として飲んでいたからだろうか?

早く彼女に会いたい気持ちがあるものの、家を去る気持ちが固く距離を取ろうとしているのが分かる態度に胸が締め付けられる

こんな形でなければ出会わなかった彼女だが、やはり契約なんてするべきではなく自分の力で母を説得するべきだったと後悔だけが残っている

莉奈には頃合いを見て正直に伝えよう‥‥

そして、佐々木さんにもしっかりと向き合って、自分の気持ちを今日伝えたい‥‥

きっと人のことばかり考えて生きてる子だから、困ると思う‥‥

でも‥彼女がいない時間なんて考えられないくらい、俺の中で大切な存在になったのだ‥

初めて会った時はただの契約上の相手だったのに、色々な表情を見せてくれた優しい彼女だったからこそ今日までやってこれた‥

他の人では駄目だと思うほどに‥‥

八雲のイジリを聞くことなど大したことじゃない‥‥今は早く彼女に会いたい‥‥

出会った頃はこんな気持ちを自分が抱くことなど想像もできなかっただけにフッと笑みが溢れた