あの時間を忘れる方法が あるなら

その日柊さんは家に戻らなかった‥‥

私は朝方ようやく眠りに付き、いつものように冨田さんと朝食を作ったものの、胸がいっぱいで喉を通らず、その日はお母様に体調が優れない事を伝えると部屋で少しだけ休ませてもらえた。

『慣れない環境で疲れが出たのね‥。熱がかなりあるから主治医に点滴を頼んだから今日は寝ていなさい。』

「すみません‥ご迷惑をおかけして」

まさか体調が本当に悪かったなんて気が付かず謝る私をお母様が制するとお医者様に診察をされている途中で意識を失いそのまま眠ってしまった

あれ‥‥?柊さんが向こうで笑顔で私を呼んでいて、早く追いつきたいのに全然埋まらない距離に立ち止まって息を整えていると、見上げた先にいたのは本物の莉奈さんで、柊さんに駆け寄ると2人は抱き合い幸せそうに見つめ合っている

「‥さ‥‥柊さ‥‥」

何度も呼びかけてるのに、柊さんはもう莉奈さんしか見ていなくて、私の存在などなかったかのように2人で背を向けて歩いて行く

「待って‥‥行かない‥で」

『大丈夫‥ここにいる‥安心しろ』

誰かが私の涙を優しく丁寧に拭ってくれているのか、冷え切った体が温められると真っ暗な世界に光が差し込み私はゆっくりと瞳を開けると
瞳からまた涙が溢れた

『起きたのか?』

‥えっ?

声がする方に顔を傾けてゆっくり向けば、いるはずがないと思っていた柊さんの綺麗な顔が至近距離にあり目を見開く