あの時間を忘れる方法が あるなら

莉奈さんが住む別荘に到着すると、自分にこれからの時間冷静でいないといけないと言い聞かせるように拳で胸を軽く叩いて深呼吸をした

柊さんにとって誰よりも大切な莉奈さん‥

そんな大切な人が目を覚ましたなんて聞いた時の柊さんの嬉しそうな顔が目に浮かぶ

ゆっくりと家に足を踏み入れると、莉奈さんが眠っている2階へと足を進め震える手でドアをノックした

「佐々木です」

いつぶりか分からないけど、自分の本当の名字を口にした時、目の前に迫る別れに実感が沸きつつももう一度深呼吸をした

『どうぞ』

「失礼します」

ドアノブを回してドアを開けると、ベッドに横たわる莉奈さんの手を両手で包み込み笑顔で話す柊さんの姿を見つけ泣くのをグッと堪える

そして、目を開けた本物の莉奈さんが私をジッと見つめてから柊さんをまた見つめた

『柊さん‥あの方は誰?私にとても似ている
気がするけど‥』

ドクン

本物に似せた髪型や髪色、メイクを見てそう思われても仕方がない‥‥

この数ヶ月、自分としてではなく莉奈さんとして生きていたからこの容姿が当たり前になっているのだ

『莉奈、彼女は佐々木 結愛さん。君が眠っている間、君として代わりに過ごしてくれた人だよ。佐々木さんのおかげで俺は縁談も全て断る事が出来た‥‥。莉奈が目が覚めるまで‥‥そういう契約で身代わりをしてくれたんだ。』

目が覚めるまで‥‥
改めて現実を柊さんの口から突きつけられると、胸が張り裂けそうなほど苦しかったが、柊さんを見つめてから精一杯の笑顔を向けた