あの時間を忘れる方法が あるなら

『経営者、それもこれだけの大規模な会社の社長の隣に立つ女性はあなたならどんな人がいいと思うかしら?』

ドクン

一般家庭で育ち、幼い頃から借金を背負った両親を見て中学を上がる頃にはお金を返すために一緒になって働いた

そんな私が正しい答えなんて分かるはずもない

「すみません‥‥私には分かりません。」

ノートにまた今思っている気持ちを書き込む間もお母様の視線が気になってはいたけれど、嘘を書いてもダメな気がしたので正直に書く事にした

【きっと柊さんは先を見据えてお仕事をされていると思うんです。私は不動産の事も詳しくなく無知ですが、安心して貰えるように毎日の生活の部分だけでも支えれる人になりたい】

有名な大学を出ていれば‥‥
教養があり、そういった業界の事を同じ目線で支えられたら本望だと思う

でも‥それは私にはないから、柊さんが逆に疎かになり得る生活の面だけでも支えたい

『柊があなたを選んだのも分かる気がする。あなたには野心や欲望がないのに、人の為に動ける人だから。』

お母様‥‥

柊さんから褒めて貰えるだけでも嬉しいのに、何も出来ていない役立たずの私に優しい言葉をかけてもらえ、思わず目頭が熱くなる

『柊の事を頼みましたよ。』

「ッ‥‥はい‥ありがとうございます。」

泣くつもりはなかったのに、目から涙がこぼれて焦ると視界の向こうに柔らかい表情で微笑むお母様にまた涙が溢れた