あの時間を忘れる方法が あるなら

『分かったよ。お姉さん、もし良ければ空いてる時にまたここに来てくれる?話し相手になって欲しいの。』

「はい、勿論です。私で良ければぜひ。」

『うん、約束よ?』

白く細い指と指きりをすると、部屋の外にいつのまにかいたシズさんに付き添われながら蘭さんは茶室を出て行った

『こちらに来なさい。慣れていない人がずっと正座はキツいでしょうから。』

「はい、ありがとうございます。」

私の口元を見てからお母様が立ち上がると、痺れかけていた足をゆっくりと揉みほぐしてからお母様について別の部屋へと案内されると、お部屋から見える反対側のお庭に沢山の色とりどりの花があり思わず見入ってしまう

「すごく綺麗‥‥生けられてるお花はここのなのかな‥‥」

案内されたお部屋にはテーブルと椅子が置かれていてお母様が座られた正面に座らせていただくと、戻って来たシズさんがお茶菓子とお茶を置いてから部屋を静かに出て行った


『あなた‥‥本当に普通の人なのね』

えっ?

『数日一緒に過ごしてても下働きの者と楽しそうに話して食事や掃除をして‥‥欲はないのが
分かったわ‥誤解していたことを謝ります。』

「そんな!ッ‥」

話そうとして声を飲み込むと持っていたノートとペンを巾着から取り出し伝えたい事を丁寧な字で書いてからお母様の方に見せる

【私には何も特別自慢出来ることも優れた事もありません。自分ができる事があったのでそれを一緒にやらせてもらいました。】

柊さんのために自分らしく自分ができる事をやっただけ‥‥まだ何も得られてもない状況で本音を言えば不安でたまらないのだ