あの時間を忘れる方法が あるなら

『叱られるかもしれないけど行きたいわ。とても退屈していたの。』

私の腕に掴まる蘭さんに思わず笑ってしまいながらも、素敵な空間を2人で歩き奥の茶室へとやって来た

「失礼します、遅くなり申し訳ありません」

『座りなさ‥‥‥蘭、起きて平気なの!?』

私の後ろから顔を覗かせた蘭さんに、静かに座っていたお母様が焦る様子を初めて見せた

補聴器を壊された時でこそ冷静に対応されていたのに、よっぽど蘭さんの事が心配なんだと私にさえ伝わるほどだった

『平気よ。今日はとても気分がいいの。』

柊さんと同じく慣れた手つきで話しながら手話をすると私の手を引きお母様の対面に一緒に座った

『素敵なお着物ね。‥よく似合っているわ』

「あ‥ありがとうございます。柊さんが私に選んでくださいました。」

わたしは手話ができない為念の為ノートとペンを持っては来ていたが、書こうとしたら蘭さんがそれを制して手話をしてくれた

それから素敵な茶室でお母様が点ててくれたお茶を作法もわからず蘭さんのを見よう見まねで頂き、味わったことのない時間を過ごさせて頂いた

『蘭はそろそろ部屋に戻りなさい。少し彼女と話がしたいから』

ドクン

ここに来て4日目にしてようやくお母様と2人で話せる事を望んでいたのに、いざ目の前にするとやっぱり緊張が増して震えそうになる

莉奈さんとしてどう向き合えばお母様に認めてもらえらのか考えなかったわけじゃない

でも‥柊さんが何度も言ってくれた‥‥

君は君らしくいればいいと‥‥

この言葉がなければ私は今ここに座ることすら出来ていなかったかもしれない‥‥