あの時間を忘れる方法が あるなら

「失礼します」

朝の掃除をお手伝いしてからシズさんに着物を着付けて貰いいつも庭園から眺めていた離れに向かい静かに戸を閉めると、玄関横の棚に飾られた立派な生花の美しさに驚いた

あちらのお屋敷に飾られていたものは全てお母様が生けているとシズさんに聞いている

私は素人でお花にも詳しくないけれど、とても素敵だなと思えた

普段見られない花々に見惚れていた私は、背後から近付いて来た人に気付かず、着物の袖を二度ほど引っ張られて初めて背後に立つ女の子がいた事に驚いてしまった

「ッ!!」

綺麗な顔立ち‥‥でも‥透き通るほどに青白い顔色は儚げで今にも倒れてしまいそうなほどだ

冨田さんやシズさんからもこの女の子の話は一度も出たことがなかった為余計にビックリせざるを得なかった

『あなたは‥誰?』

「あ‥ご挨拶が遅れてすみません。私は柊さんとお付き合いさせて頂いている長浜 莉奈です。あなたのお名前も聞いても良いですか?」

肩までのサラサラの黒髪に切り添えられた前髪

その髪型によく映える二重が美しいパッチリとした瞳と薄くて形の良い唇に、顔色さえ良かったら相当な美人だと感じられた

『柊兄様の恋人‥‥?』

「はい‥柊さんは私に勿体無いくらいの方ですが、とても大切にしていただいています。」

『そう‥‥私は兄様の妹の蘭、高校3年生よ。体が強くないから体調を崩すとここで静養してるの。お姉さんはここに何しに来たの?』

「私は柊さんのお母様のご趣味のお茶に誘って頂いたので来たんです。蘭さんも体調が良さそうでしたらご一緒しませんか?」

まさか柊さんに妹さんがいらっしゃるとは思わなかったけれど、見れば見るほど兄妹共に容姿が美しくてよく似ていると感じた