あの時間を忘れる方法が あるなら

『困っている事はないか?』

次の日、夕方仕事を終えて早めに帰宅出来た柊さんとお母様と夕食を終えた後、柊さんのお部屋に呼ばれて一緒にソファに腰掛けた

「何もないです‥」

『‥‥それならいいが、どうして悲しそうな顔をしてるのか教えて?』

えっ?

綺麗な顔を下から覗かせる柊さんと数秒見つめ合ってから下に視線を逸らすと、膝の上で両手をギュッと握りしめた

「柊さんと一緒にいる為にここに来て、何かを学べたらいいとは思ってるんです。でも‥皆さんとても優しくていい方ばかりで‥‥。忙しく働いて来た私には、ここでの時間の過ごし方が贅沢で申し訳なくなるんです。」

お母様も、話しかければ通訳の方がちゃんと返して下さるし、本当に普通にしているだけでお母様は私の事を認めて下さるのか分からなくなってしまう

『言っただろう?君は君らしくいればそれだけで大丈夫だと』

両手を強く握りしめる私の手を包むように柊さんが自分の手をそこに置くとフッと小さく笑っていた

「でも‥‥私らしくいたら私になってしまうんです。柊さんの大切な人にならないといけないのに‥ッ」

困らせたくないのに、今は優しくされると余計にツラくなる。それなのに、柊さんはそのまま私を自分の方に引き寄せ腕の中に閉じ込めた

『本当に君には困ってしまうな‥‥』

ドクン

頑張るとか平気とか言っておきながら結果を出せない自分に呆れたのか、耳元で囁く声に胸が苦しくなり目頭が熱くなる