あの時間を忘れる方法が あるなら

「おはようございます」

朝5時起床

用紙に記入されていた項目はこれだけ

起きてから何をすればいいかそれは柊さんのお母様が知るのみ

本当に正解があるかすら分からないのだ

立派な土間の台所では、着物と白の割烹着を着た少し年配の女性が料理をしていた

『おはようございます。使用人の冨田と申します。』

「長浜 莉奈です。‥とてもいい匂いですね。お手伝いしてもよろしいですか?」

『ええ、構いませんよ。奥様は朝はいつもサンルームで召し上がられるんですよ。今日は焼きたてのスコーンと野菜たっぷりのミルクスープ、茹で卵とブルーベリーのヨーグルトにしようかと。』

冨田さんが丁寧に教えてくれるメニューを聞いているだけで不謹慎にもお腹がぐーっと音を立てて鳴ってしまった

『ふふ‥今日は多めに作りましょうね。坊ちゃんもいらっしゃるなんてこんな賑やかな事はなかなかないので』

「他の使用人の方はどちらにいらっしゃるんですか?」

冨田さんから指示された野菜をサイコロ状に切りながらも、昨日から感じていた余りにも静かなお屋敷に少しだけ違和感を感じていた

夜に着いた事もあるけれど、お母様、通訳の氷室さん、シズさん、そして冨田さんしか今のところ会えていない

まだ朝早いから他の方は後から順に来られるのかな‥‥

『ここには最低限の人しか入る事を許されていないんですよ』

えっ?

包丁を動かしていた手を止めると隣でスコーンを天板に並べていた冨田さんが少し寂しそうに眉を下げた