あの時間を忘れる方法が あるなら

手話を使わずにお母様が自らの声で問いかける声は優しいのに真っ直ぐブレない強さが感じられ、思わず唾を飲み込んだ

今は柊さんとの契約を忘れるわけではないけれど、見透かされないように私も芯を強く持ってここで答えを見つけないといけない

いつか柊さんの元を離れる日が来たとしても、二度とこんな経験は出来ないだろう‥‥

「お受けします」

『‥‥莉奈』

心配そうに私を見つめる柊さんにも口角をあげて頷くとお母様に向かって意思が伝わるように頭をしっかりと下げた

『この屋敷で今からあなたがする事に誰も文句は言いません。但し‥周りがあなたに従うかはあなた次第です。』

「分かりました。一月どうぞよろしくお願い致します」

ついに始まろうとしている柊さんのご実家での生活で得られる事が見つかった時は、きっと柊さんに守られるだけでなく守れる人側になっていたい

コンコン

「はい」

『莉奈、入ってもいいか?』

柊さんの声にお風呂から出た私は髪の毛をタオルで拭きながらドアをそっと開けた

「すみません、まだ髪の毛を乾かしてなくて」

『おいで。俺が乾かしてあげるから』

「えっ!?そ、そんな‥自分で出来ます!」

今日も普通に仕事をして来た柊さんと夜ご実家に足を運んだから相当疲れてるはず

それに、雇い主にそんなことさせられない

私が焦って柊さんから離れようとしているのに、離れれば離れるほど近づく柊さんに集中していたから背後にベッドがある事に気づかずそのまま後ろに倒れそうになる

「ワッ!!‥ッ!!」

私がベッドに仰向けに倒れたのはいいが、柊さんまでもが、一緒に倒れてベッドの上で私に覆い被さるように重なってしまった