あの時間を忘れる方法が あるなら

『長浜様、ようこそお越し下さいました。そして、坊ちゃんおかえりなさい。』

『坊ちゃんはよしてくれ‥』

着物を着た品のある白髪の女性が出迎えてくれると、柊さんは綺麗な顔を歪ませてから女性に2人分の荷物を預けてくれた

坊ちゃん‥‥

不動産事業の御曹司ともなれば、そう呼ばれてもおかしくないとは思うけれど、あまりにも可愛く思えてしまい頬が緩むと柊さんに頬を軽くつねられた

「ッ‥すいません‥ふふ」

『フッ‥‥笑い過ぎだ』

大きな門に足を踏み入れた時は緊張も物凄くしていたし、やっぱり足が震えそうだったけど、いい意味で気が紛れた気がする‥‥

『こちらへどうぞ。お部屋は坊ちゃんの部屋の近くにご用意させていただきましたから。』

『シズさん‥分かったからもう行こう』

ここにいる間はいつもは大人っぽくて落ち着いている柊さんもなんだか幼く感じられ、普段見ることのない表情もとても新鮮で嬉しかった

案内されたお部屋はとても素敵な洋室で、お姫様になったかのような天蓋付きのベッドにバストイレは当たり前に備え付けられていた

柊さんのマンションも凄過ぎて驚くことばかりだったけど、ここはまた違う意味で凄過ぎて圧倒されてしまう

『奥様がお待ちですから行きましょう。』

「は‥はい!」

柊さんが私の手を優しく握ってくれたが、シズさんと呼ばれた方がニコニコしながら見ていたことが恥ずかしくて慌てて手を離した