あの時間を忘れる方法が あるなら

体に優しい日本食をご馳走になってからは、柊さんのペースについていくのが大変で、高そうなお店に入るとすぐにVIP室に案内され、まるで着せ替え人形のように何着も着替える羽目になった

『最後にこれも買っておかないとな‥』

「‥‥まさかこれって‥」

『母が好きな着物だ。』

確かに、あの日お母様が着ていたお着物も本当に素敵だった‥‥

私もあんな風に着こなせる日が来たら柊さんの隣に凛としたら立てるのだろうか‥‥

店内を見て回ると、眩暈がしそうな値段に驚きながらも、高いだけあって一つひとつの着物の色や柄などはとても素敵な物ばかりだった

『実はもう注文してあるから、今日は受け取りに来たから君が気にいるといいけど。』

えっ!!?

奥に案内されると、品のある女性がたとう紙と呼ばれる包みを丁寧に広げると私にそれを見せてくれた

「‥‥‥素敵な‥色‥」

『こちらは江戸小紋でございます。お色味は川崎様からこちらの孔雀青でとのご依頼を承り、質の良い絹で織り上げてあります。如何ですか?』

聞いたことのない色の名前によく分からないでいると、柊さんがそれを手に取り私の肩にかけてくれると鏡の方にクルリと体を向かされた

『うん‥‥よく似合う。真のある君にはこの色が似合うと思ってね。』

「‥‥とても素敵です。」

こんな素敵なお着物を本当に頂いていいのかと言う気持ちと、この色は私ではなく莉奈さんに似合うお色を選んだのだと思うと複雑な気持ちになる