あの時間を忘れる方法が あるなら

『フッ‥泣き止んだな。今はまだ寝てるといい。俺は書斎にいるから』

「ッ‥‥はい」

こっちの感情とは違って、至って冷静な柊さんはいつも通り落ち着いた声色でそう伝えると、立ち上がり部屋を出て行った

‥‥‥キスするの‥癖なのかな‥‥

こんな他人に優しくして介抱までしてくれるだけでなく、あんなスキンシップまで‥‥

まだ鳴り止まない心音に胸が苦しくなりながらも、体を休めるために私はまた眠りについた

それから二日間は体を休め、一日家でゆっくり過ごしながら荷物を纏めていると、柊さんからの着信にスマホに出た

「もしもし、どうされましたか?」

『体調が良いなら出かけないか?』

「はい、大丈夫です」

『分かった。1時間後に迎えに行く』

化粧すら施していない部屋着のままだったので、急いで準備しないといけないと思いクローゼットを開けると、何を着て行こうか悩んだ

しまった‥‥何処に行くとか何をしに行くとかくらい聞くべきだったと‥

時間がなかった為、以前買っていただいたのに着る機会がなかったワンピースを着てからお化粧を施すとちょうど柊さんが下に着いたと連絡が来たので急いで向かった

「お待たせしました。」

エントランスに停まる高級車の外で私を待っていた柊さんが私を見てきたと同時に、私も完璧なたたずまいで見惚れるほど素敵な柊さんに固まってしまう

長身でスタイルも良く、生まれ持った容姿は美しく何処をとっても文句がつけられないほどで、家で見る柊さんも素敵だけどやっぱりスーツを着こなす姿は群を抜いて素敵だった