あの時間を忘れる方法が あるなら

私が床に倒れないように支えてくれた力強い腕の中で瞳を開けると、ぐるぐる廻る視界の中で私を心配そうに覗き込む柊さんの綺麗な顔が見える

その時の顔が、あの時山で私を覗き込んでいた男の子と重なり私は無理矢理笑顔を作った

「‥‥大丈夫‥‥私‥よく怪我する‥から」

『‥えっ?‥っ!おい、結愛!!結愛!』

遠くで私の名前を呼ぶ声を聞きながらもそのまま意識を失ってしまい、目を覚ました時には自分の左腕に刺さる点滴の針に驚いて起きあがろうとしたら体に力が入らずそのままベッドに倒れ込む

『まだ寝てろ。熱が下がってないからな』

「柊さ‥‥私‥」

『沢山無理させてたんだな‥気付いてあげられなくてすまない。母の事は気にしなくていいから、まずは体を休めて欲しい。後でまた専属の医者が来るから心配いらないよ』

熱なんて、子供の時以来出したこともないのに、こんなタイミングで出てしまうなんて‥‥

「迷惑かけて‥すみません‥」

口だけは大きく叩いたのに、実際何も前に進めていないどころか足手纏いになってしまっていることに悔しくて目頭が熱くなると、そこから頬に涙が流れた

見られたくなくて右手の甲を目元に押し当てると、その手を柊さんに掴まれ至近距離まで美しい顔が近づくと私の目尻にまた唇を落とした

『迷惑だと思うなら最初からそばにいない。だから早く良くなってまた美味しいご飯を一緒に食べよう』

「柊さ‥‥ッ‥近いです」

鼻と鼻がぶつかるほどの距離にあと少し動いたら唇が触れてしまいそうで、泣いていたことも忘れるほど顔を赤らめると柊さんが今度はおでこに唇を触れさせてから離れた