あの時間を忘れる方法が あるなら

小さい時の事だからあまりよくは覚えていない事だったのに、記憶の中に残る男の子を思い出し両手で口元を押さえた

偶然かもしれない‥‥

だって莉奈さんがそう言ったのだから、勿論本当の事だと思うし、そんな偶然が幾つも重なって起きるはずなどないと‥‥

『おい‥どうした?』

「い‥いえ‥何でもありません。やっぱり疲れたので今日はもう寝ますね。」

古傷のように痛むこめかみに気付かれたくなくて立ち上がると柊さんが私の手首をまた握り足止めされてしまった

『‥君は幼い頃‥‥誰かを助けた事はある?』

‥‥えっ?

柊さんがどうしてそんな事を私に聞くのか理解できなかった‥‥

手首から伝わる体温に自分のうるさい鼓動が伝わってしまいそうで、片手で胸を押さえると柊さんに向かって笑った

「そ、そんなのありませんよ。今は恩返しにはなりますが、柊さんを助けてますから」

『‥‥フッ‥そうだったな‥すまない。おかしな事を聞いて。ゆっくり寝なさい、おやすみ』

「はい、おやすみなさい」

柊さんの部屋を出て自分の部屋に戻ると、吐き気を催し洗面所に駆け込んだ

さっき‥‥自分は何を聞かされたのだろう?

もし、勘違いじゃなければ、私と柊さんはずっと昔に会っていたの?

真実が何か分からない以上考えても仕方ない‥
そう思いながらも、左の髪をかきあげると、そこにうっすら残る5センチほどの傷痕を指でなぞると溜息が溢れた