あの時間を忘れる方法が あるなら

『母は‥あの家と関わるという事の大変さを誰よりも知っている人だ。だからこそ、契約をしたものの、君のような優しい人が耐えられるかが心配でならない』

柊さん‥‥

「私は莉奈さんとしてお役に立ちたいだけで、案外厳しい世界で生きてきたので体力も気力もある方です。」

厳しい人だとは思う‥‥でも、心根は優しい人だと感じた。

「それに柊さんも居てくれますし平気です」

『ああ‥‥安心しろ。そばにいるから』

ドクン

まだたった2ヶ月ほどしか一緒に過ごしていないのに、私の中にいる莉奈さんに向けられる優しい言葉をいくつ聞いてきただろう‥‥

本当に‥悔しいな‥彼女が羨ましくなるなんて


「あの‥莉奈さんの事をもう少し教えて下さい。私はいつかは去る立場なので、なるべく莉奈さんと入れ替わってもいいようにしておきたいんです」

柊さんの仕事に関わる人の資料は沢山頭に叩き込んだけど、結局のところ莉奈さんの容姿に似せているだけで性格や趣味とかはよく分かっていないままだった

それに、お母様が印象が違うと言っていた事がどうしても気になっていたのだ

『実は俺も莉奈のことはよく分かってないんだ。それを知る前に事故に遭ってしまったから‥‥』

‥‥えっ?

「えっ?‥よく分からないって‥‥でも柊さんの恋人‥ッ‥大切な方なんですよね?」

思っても見ない返答に戸惑い、隣にいた柊さんの方に体を向けると柊さんがソファに深く腰掛けると、小さくため息を溢して天井を見上げた