あの時間を忘れる方法が あるなら

初めてここに来た訳でもないし、掃除だってしてる部屋だけど、こんな時間に正常な意識があるまま来るのとでは違う‥‥


恋人役と莉奈さんとして生きる事は分かっている。でも‥身代わりの立場でそういうことまでするのはやっぱり違うと思える

それに‥私がもし莉奈さんの立場だったら、嘘の関係だとしても好きな人が自分が知らないところで何かをしていたら悲しいと思うから‥

「あのッ!」

『明日からのことをまだ話したいから横になりなさい。君はもう眠そうだから』

‥‥ん?

『どうかしたか?話している間に眠たくなったらそのままここで寝ればいい。俺はゲストルームで寝るから』

1人勝手に妄想を膨らませ色々と考えていた事が急に恥ずかしくなり、耳や首元まで桃色に肌を染めると、ゆっくりと近付いてきた柊さんがニヤリと笑いながら顔を覗き込んできた

『‥もしかして‥‥違う事を考えてた?』

「ッ!!ち、違いますよ‥大丈夫です!そ、それに座って聞けますから」

慌てて顔を背け柊さんの部屋のソファに腰掛けると、パタパタと手で顔を仰ぐ私を見てクスクスと柊さんは笑いながら隣に腰掛けると色々話してくれた

柊さんのお母様は、出産を終えた頃から家の重圧やストレスが重なり高熱が何日も続き生死を彷徨ったのだという

その後から耳が聞こえずらくなり、柊さんが5歳になる頃には聴覚を完全に失ったそうだ


「では‥話そうと思えば話せるんですか?」

『口話といってゆっくり話せば簡単な事なら読み取れるようだけど、やっぱり手話の方がやり取りがスムーズだから母には氷室がついてくれている。