あの時間を忘れる方法が あるなら

印象が違うということは‥‥お母様と莉奈さんは会った事があるのだろうか?

いくら顔や見た目を似せても、声や性格までは全く同じには出来ない‥‥

耳が聞こえないお母様に私の声が聞こえてなかったとしても、他人のフリをすることの限界は必ずあるはずだ

「あのっ‥わ‥私は」

パァン

ビクッ

冷や汗が背中を伝おうとしていたその時、勢いよく両側の襖が開けられ、そこに綺麗な顔を歪ませた柊さんがいた

『どういう事ですか!?彼女を連れ去るなんて
いくら母親でもしていい事と悪い事がある事くらいわかるはずですが!?』

柊さん‥‥

彼の姿を見ただけで、張り詰めていた糸が切れたのか横に倒れそうになると、力強い腕にそのまま抱かれシダーウッドの香りに包まれる

私がいっぱいいっぱいな状況だったのを察したのか、柊さんが抱き締める腕の力を少しだけ強めた

『母から君を連れ去ったから今すぐここに来なさいとメールが届いてね‥‥もう大丈夫だから安心しろ。』

通訳の人が話されている内容を手話で細かく伝えているのを見ながらもたれていた体を起こすと、もう一度正座をして座り直した

守られてばかりじゃ駄目だ‥‥私の覚悟を見せないと、きっとこの方には何も伝わらない‥‥

「私は‥世間知らずでとても未熟者です。今も、柊さんの側でゼロから沢山仕事を学んでいても立派に柊さんを支えられてもいません」

『ッ‥そんなことは!』

「ううん‥‥私がそう思うんです。なので、私の事を信じられると思えるようになるまで厳しくても構いません。柊さんのような立場の方を支えられるようご指導頂けませんか?」