あの時間を忘れる方法が あるなら

『フッ‥‥心配しただけだ。少し休憩してから八雲の補佐を頼む。今日は帰りが遅くなるから先に休んでろ‥いいな?』

「ッ‥はい‥かしこまりました」

まるで大切な物にでも触れるかのような優しさについ顔が赤くなると、それを見た柊さんが笑っていた

気のせいかな‥‥
あのパーティーの日から、前よりも距離感がグッと縮まっている気がする‥‥

勿論、柊さんは莉奈さんの元に通い続けているし、それは前とは変わらないけれど、なるべく私が1人にならないようにと、気遣ってくれてる気がするのだ

恋人だと思って接してくれるのは、普段からそうしていないと外では自然に振る舞えないから
私の為にそうしてくれている

もうすぐこの契約が始まって2ヶ月が経つけれど、周りから自然に寄り添えて見えていたら嬉しいなと思う

運転手さんにマンションまで送ってもらいいつものようにお見送りをすると、突然背後から口元を押さえられ、恐怖から必死に抵抗をするものの、薬品のようなものを嗅がされそのまま意識を失ってしまった


その後、気持ち悪い吐気が込み上がるのと同時に目を覚ました私は、ぼんやりとする頭で辺りを見渡すと、和室に寝かされていることに気付いてゆっくりと体を起こす

‥‥ここは‥‥何処?

マンションの前で意識を失ったのは覚えているけれど、背後にいた人の顔も見ていないし、そもそもそんな余裕もなかったのだ

周りを見渡しても私の鞄もなく、柊さんに助けを呼ぶ事も難しそうで、一気に恐怖が増してゆく