あの時間を忘れる方法が あるなら

『頼む‥‥‥側にいてくれないか?』

ドクン

片手は首の後ろを支え、もう片方の柊さんの手が私の頬に触れると、そこを優しく親指の腹で撫でてゆく

柊さんの真っ直ぐ突き刺さる思いは、いつも胸が締め付けられて苦しい‥‥

私だって思ってる‥‥
柊さんがもっと嫌な人だったら良かったと‥

そうしたら、この契約はお金の為に利用しただけで、莉奈さんが目を覚ましたら心置きなく去るから‥と気楽に思えたはずだ

「‥役不足でもいいんですか?」

『ああ‥‥君がいい』

「迷惑しか‥かけないのにいいんですか?」

この先が確実に苦しいと分かっていて飛び込む自分はとても馬鹿だと思っている‥‥でも‥

『フッ‥‥君のことを全部受け入れる。今だけは俺だけを信じて側にいて欲しい。嫌な事に今後も巻き込むとは思うが、俺は自分で選んだ君を絶対に見捨てない。確かに莉奈は俺の大切な人には変わらない。でも、今日の君は‥俺の最高のパートナーであり、本物の恋人だった。誰よりも愛しくて堪らなかったほどに‥‥』

「ッ!!」

両目に涙が溢れ、自分の意思で止めることが出来ないでいると、吐息がオデコに感じられ、柊さんがそこに唇を寄せた

愛することはないと契約した時に言われたから、これは愛じゃないと分かっているのに愛しかったと言われて激しく動揺した

言ってることは無茶苦茶で、恋人なんてよく言えたものだと普通なら罵るのが正しい‥なのに‥どうしてこの温かい腕から抜け出せないのだろう

全て莉奈さんに向けられた愛情なのに、今だけはもう少しだけここにいたいと願ってしまった